焦点:北朝鮮の弾道ミサイル実験、多弾頭核兵器と偵察衛星の開発目的か

2022/03/14
更新: 2022/03/14

[ソウル 11日 ロイター] – 北朝鮮が先月末と今月初めに相次いで実施した弾道ミサイルの打ち上げは、複数の核弾頭を射出できる巨大な大陸間弾道ミサイルICBM)と軍事用偵察衛星の両方に利用可能な技術を開発し、テストすることが目的のようだとアナリストは見ている。

米国と韓国の当局者は11日、北朝鮮が2月27日と3月5日に試験発射したミサイルは新型ICBMだと発表した。北朝鮮は今回の打ち上げを皮切りに、衛星と偽って、2017年以来となるICBMの本格的な発射実験に乗り出す恐れがある。

米韓当局によると、「火星17」と呼ばれる巨大な長距離ミサイルシステムは、2020年10月の平壌での軍事パレードで初めて公開され、昨年10月の国防展覧会でも展示された。

火星17のサイズが大きいことから、北朝鮮はそれぞれの弾頭が独自の攻撃目標に向かう「複数独立標的型再突入機(MIRV、マーブ)」と呼ばれる先端技術を目指している可能性があると、アナリストは指摘する。

マーブでは、メインのロケットブースターが、複数の小型ロケットを積んだ「バス」を軌道下弾道飛行経路に打ち出す。バスには、ミサイル防衛システムを混乱させるためのデコイ(おとり)が搭載されることもある。

バスには姿勢制御用の小型ロケットとコンピュータ化された慣性誘導システムが積み込まれており、複数の弾頭を異なる軌道で操り、射出する。

米国に本拠を置くカーネギー国際平和財団の上級研究員、アンキット・パンダ氏は、北朝鮮の国営メディアが最近の衛星システムの試験に関する報道で、空力物体の方向の変化を支える姿勢制御について触れていると指摘。「これが新しい偵察衛星と、ICBMの複数弾頭用バスの開発との配備の両方に役立つことが明らかになった」と述べた。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は昨年、多弾頭ロケットの開発が最終段階にあると述べた。

また、金氏は複数の偵察衛星を軌道に乗せることは国家の安全保障にとってだけでなく、国威発揚のためにも重要だと述べ、新型ICBMの実験を指示する可能性を示唆している。

米国に拠点を置くジェームズ・マーティン不拡散研究センター(CNS)のマイケル・ドゥイツマン研究員はツイッターへの投稿で「北朝鮮は衛星をうまく軌道に乗せたいと望んでいる」とした上で「それ以上に、数が限られている輸送起立発射機(TEL)を最大限活用するため、より多くの弾頭をミサイルに搭載したいのだろう」と分析した。

<秘密裏の発射>

北朝鮮は今回の打ち上げについて、開発中の偵察衛星に使用する様々な部品の試験を行ったと説明したが、ロケットの詳細や写真は一切公開せず、秘密主義を貫いた。これは異例だ。

北朝鮮は通常、宇宙ロケットを西海(ソヘ)の衛星発射場の固定発射台から打ち上げる。しかし、今回は国際空港がある平壌近郊の順安(スナン)から発射しており、TELが使われたもようだ。

北朝鮮の宇宙開発計画は、軍事用ミサイル開発との関連で常に論議の的になっている。

米スタンフォード大学国際安全保障協力センター(CISAC)の研究者、メリッサ・ハンハム氏は「北朝鮮がテポドン(大浦洞)や銀河・光明星など一連の初期のロケットを使って理論を検証し、その後、火星14や火星15型と呼ばれるICBMを開発した」と指摘。このような開発の道筋は、全てのICBM保有国にとってごく当たり前の流れだという。

北朝鮮が最後に正式なICBMの発射実験を行ったのは2017年11月。この時は火星15を1回打ち上げ、高度は約4475キロ、飛行距離は950キロで、米国本土全体が推定射程内に入った。

一方、韓国側の分析に基づくと、新型の火星17を使用したとされる最新の試験発射は、高度が550キロ、飛行距離が300キロだった。

アナリストは、今回の実験では液体燃料を使う火星17の1段分のみを使用した可能性があるとの見方を示した。

ある米政府官はワシントンで記者団に対し、北朝鮮による弾道ミサイル技術の使用は、たとえ宇宙ロケットであっても、国連安全保障理事会の決議によって全面的に禁止されていると改めてくぎを刺した。

(Josh Smith記者)

Reuters