「事務総長が介入」 国連、疑惑調査の裁判長を解任 中国に反体制派名簿提供めぐり

2022/03/24
更新: 2022/03/24

 

国連紛争裁判所(UNDT)の裁判長、オーストラリア出身のローワン・ダウニング氏(69)は、国連が中国当局に反体制派の名簿を提供していたという内部告発を受理した後に解任された。同氏は解任は「司法の独立性への攻撃」「クーデター」と非難した。

21日付の豪紙シドニー・モーニング・ヘラルド(SMH)によると、UNDTの前裁判長で元国際戦犯裁判官のダウニング氏は当時、国連の人権担当官だったエマ・ライリー氏(43)の内部告発に対して調査を実施していた。 ライリー氏は、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、国連人権理事会で発言する予定のウイグル人を含む反体制者の名簿を中国政府に提供したと告発した。

ダウニング氏は2019年7月、ライリー氏の告発に対する最終判決を下す直前に任を解かれた。

同氏は記者会見で、19年に解任された際、彼が国連紛争裁判所内の会議で、判決が「10日以内」に出ると発表したため、「上層部に知られた可能性がある」と述べた。

ダウニング氏は、国連の解任を「一刻も早く裁判官を排除するためのクーデター」「どの国でも容認できない司法の独立に対する攻撃だ」と批判した。

同氏はライリー氏の主張を部分的に支持する判決を下していた。彼女の訴えである「職権乱用」について調査を命じるとともに、グテーレス国連事務総長がライリー氏の訴えに適切に対処せず、国連の検討会を違法に延期したと批判している。

ダウニング氏は記者会見で、グテーレス事務総長は「事実を歪曲し、内部告発者(ライリー氏)を理不尽な人間として描いている」と指摘した。

同氏によると、自身を含む調査に関わった「組織内のメンバー」の知るかぎり、ライリー氏の事件は「事務総長が直接介入した唯一のケース」であった。事務総長は、自身の首席補佐官を通じてライリー氏の事件に介入したという。

国連の内部告発者

13年、ライリー氏は、中国政府のジュネーブ代表団が世界ウイグル会議のドルクン・エイサ代表を含む国連人権理事会の講演者リストを要求した際、国連が中国の反体制派の名簿を中国政府に提出する「慣行」を発見した。

ライリー氏は中国共産党の要求を拒否するよう同僚に助言したが無視され、彼女自身も「排除され、公に中傷され」、さらには「権利を剥奪された」という。ライリー氏は21年11月、「外部との無許可の接触」を理由に国連から解雇された。

20年にイギリスのラジオ局LBCに出演したライリー氏は、中国政府が人権理事会で発言する予定の反体制者の名前を入手したら、「その情報を使って……中国にいる彼らの家族を脅かす」と語った。

国連のステファン・デュジャリック報道官は、グテーレス事務総長がライリー氏の件に直接介入したことを否定した。また、国連は中国共産党に反体制派のリスト提出をやめたこと、国連の会議に出席したことで報復を受けるのは許しがたいことだとも述べた。

中国は国連では、米国に次ぐ2番目の財政貢献国である。新疆ウイグル自治区でのウイグル人虐殺など中国共産党による人権侵害に抗議し、欧米諸国が2020年の北京冬季五輪を外交ボイコットしたが、グテーレス事務総長は中国政府の貴賓として開会式に出席した。

国連は、独立した調査団を新疆に派遣せず、中国での人権侵害の疑いに対処するための安保理決議も通過させていないため、人権団体から批判を浴びている。

(翻訳編集・王君宜)