防衛省によると、岸信夫防衛大臣と魏鳳和・中国国務委員兼国防部長が27日、2時間ほどテレビ会談を行った。岸防衛相は中国軍や海警局船による一方的な現状変更の試みに対して、極めて深刻な懸念を伝え、強く自制を求めた。
岸防衛相は台湾情勢についても言及し「台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障にとってはもとより、国際社会の安定にとっても極めて重要」と述べ、動向を注意していくと伝えた。
南シナ海問題について「一方的な現状変更の試みや緊張を高める如何なる行為にも強く反対する」と述べたほか、今年2月に施行された海警法についても深刻な懸念を伝えた。同法は軍の最高指導機関である中央軍事委員会の指揮下にある中国海警局が、中国の自国領海とみなす地域に入る外国船舶に対する武器の使用を認めている。
加えて、岸防衛相は中国の不透明な国防費の増加及び戦力の近代化・増強に対しても、強い懸念を伝達した。
また、魏国防相は尖閣諸島や東シナ海、台湾海峡に関しては「中国の領土主権と海洋権益」と従来の主張を強調し、日本に対して「歴史の直視しそこから学ぶ」よう要求した。
両大臣は「日中防衛当局間における海空連絡メカニズム」に基づき、その実効性を向上させる「日中防衛当局間ホットライン」の早期開設が重要であることを改めて確認した。
緊張が高まっている極東アジア情勢
ホットラインが設置されたとしても、実際の危機に直面した際に中国側が使用するか、日本側からの連絡に対して応答するかは不透明との評価もある。海上自衛隊幹部学校Webページに掲載されたコラム・日中海空連絡メカニズム(2018年6月6日付)は「定期会合にしてもホットラインにしても、その有効性は日中の国家間関係の従属変数であり、確実なものとは言えない」と記している。
こうした日中関係のなか、中国軍は一方的な軍事行動をますます拡大させている。防衛省によると、中国海軍空母「遼寧」と護衛艦「南昌」などからなる5隻は25日0時前後、沖縄本島と宮古諸島を通過した。中国側の報道によると、この空母編隊は西太平洋で訓練を終え、日本近海を横断した後、中国に戻ったとみられる。
台湾海峡をめぐる危機感の高まりについて日本の政界では言及が増えている。特に、国内外の講演会に出席する安倍晋三元首相は12月はじめ、共産党指導部が中国の「軍事的冒険」によるリスクを理解すべきだと強く警告した。
中国の軍事力の増大に伴い、台湾に対する軍事的圧力は年々高まっている。台湾周辺での大規模な軍事演習は日常的に行われており、台湾南西部の防空識別圏には毎日、中国軍機が侵入している。
日本周辺地域における米軍側の関与も強まっている。23日の共同通信社の独占報道によると、日米両軍は台湾有事を想定して共同作戦を行うための有事法制の草案を作成しているという。年明けに開催されるという外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で計画策定への作業開始に合意するという。
報道によれば、台湾をめぐる緊急感が高まった初期段階で米海兵隊が南西諸島に臨時基地を設置して自衛隊の支援を受けながら部隊を展開する。日本政府としての政策決定、土地使用や国民保護などに関する法整備が必要となる。
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