深刻化する中国の少子化問題 出産促す「育児ローン」提供する地方政府も

2021/12/28
更新: 2021/12/28

近年、中国の少子化問題は深刻になる一方のようだ。地方政府はこのほど、出産を促す目的で子育てを支援するとして優遇融資策を相次ぎ打ち出した。米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じた。

東北部の吉林省は子どもを産む夫婦に最大20万元(約360万円)の「低金利育児ローン」を提供する。 中国人民銀行江西省支店が「三児ローン(子ども3人を産む夫婦への優遇策)」を打ち出した。

今年5月に発表された中国の第7回国勢調査によると、2020年の合計出生率はわずか1.3(1人の女性が生涯産む子どもの数)。この数値は日本やイタリアなどの少子高齢化国家とほぼ同水準で、通常値は2.1とされている。

中国統計局が11月中旬に発表した「中国統計年鑑2021」によれば、2020年の人口自然増減率は1.45%で、1978年来の最低水準を記録した。

深刻化する少子化問題を解決するため、中国政府は計画生育政策を緩和した。2016年には40年近く実施された「一人っ子政策」を廃止し、第二子の出産を許可、今年5月31日からは3人目の出産を積極的に促している。

長年、中国の人口政策を研究してきた米ウィスコンシン大学の学者、易富賢氏はかつて、中国政府の公式統計の信憑性に疑問を呈した。同氏は、「中国の人口は2018年からすでに減少しはじめており、人口危機は政府の公表より遥かに深刻だ」と述べた。

中国の人口問題専門家はVOAの取材に対し、中国の人口はほぼゼロ成長に突入したと匿名を条件に証言した。

慈善団体「北京益仁平センター」の創設者で、米ニューヨーク在住の陸軍氏はVOAに対して、住居費や医療費など育児費用が高いため、多くの中国人の出産願望は低いと指摘した。「多くの家庭にとって、1人、2人の子どもを育てるのがすでに大きな負担だ。3人の子どもを持つ余裕のある世帯はわずかだ」という。

同氏によると、中国で22歳成人までの子育て費用は一人当たり100万元(約1800万円)という試算があり、一般の市民にとって2人目以上を出産するのは経済的に無理である。

当局は一人っ子政策時代に強制中絶、強制避妊を広範に実施してきたが、ここ最近「医療上必要でない」中絶を制限すると通達した。

(翻訳編集・叶子静)