北京冬季五輪を来年2月に控える中国共産党政権は大会を「ポジティブ」な話として広報するために、SNSで影響力のある米国人インフルエンサーに対して宣伝広告を支払っていたことがわかった。ウイグル人など人権弾圧を理由に米豪英などが外交的ボイコットを表明するなか、悪印象を塗り替えることが目的とみられる。
司法省が開示した12月10日付の資料で明らかになった。インフルエンサーたちを監督するコンサル企業ビッピ・メディア(Vippi Media)は在ニューヨーク中国領事館と30万ドルの契約を結んでおり、北京冬季五輪と米中関係を好意的に描写するコンテンツを配信する。
配信媒体はSNS大手インスタグラム、ティックトック、ライブストリーミング配信プラットフォームのTwitch(ツイッチ)で、3月中旬まで広告宣伝を行う。
この報道は選挙資金やロビー活動のデータを追跡しているワシントンの非営利団体オープンシークレットによって最初に報告された。
開示された申告書によると、契約は11月22日に結ばれたという。司法省は外国代理人法に基づきビッピ・メディアに情報開示請求を行なった。資料によると、中国領事館は21万ドルの前払い金を支払っているという。
インフルエンサーたちは、北京に集まった選手たちの準備状況、大会で導入された中国の最新技術、「感動の瞬間」や北京の歴史などのコンテンツ作成を依頼され、最低24件の投稿を公開することが求められている。
また、投稿の5分の1程度は「中米関係における協力や良いこと」を盛り込む必要があるという。例として、ハイレベルな交流や「前向きな成果」、気候変動や生物多様性、新エネルギーに関する協力などが挙げられている。
大紀元はビッピ・メディアからのコメントは得られていない。
米ホワイトハウスのサキ大統領報道官は6日の記者会見で、中国の新疆ウイグル自治区での人権弾圧を理由に、2022年の北京冬季五輪に選手団以外の外交使節団を派遣しない外交ボイコットを発表した。英国、豪州、カナダなどの同盟国も米国に続く同様な決定を表明した。
中国共産党、海外SNSに宣伝注力
中国共産党は国営メディアの海外展開を含め巨額を投じて宣伝キャンペーンを展開している。官製英字新聞「チャイナ・デイリー」は5月から10月にかけて、欧米の読者に新聞を広告・配布するために550万ドルを超える予算を組んでいる。
今回明らかになったSNSを活用した政治宣伝は、親中共的なストーリーを世界に広めるには費用対効果のより高い新たな手段といえる。中国領事館は3月13日の契約終了までに、投稿が340万回視聴され、チャイナ・デイリーの世界発行部数の4倍近くになると予想している。
中国共産党政権は以前からSNSを利用して、国内外に向けて党の利益に即した政治宣伝を拡散してきた。昨年、大紀元が入手した内部文書によると、中国共産党政権がFacebookを通じて台湾の主権保有の主張を喧伝していたという。
SNSも中国共産党を背景にした偽情報の封鎖を行なったことがある。今月初め、SNS大手メタ(旧称フェイスブック)は新型コロナウイルスについて偽情報と反米的な主張を広めた約600のアカウントを削除した。ツイッターも同様に、新疆ウイグル自治区の人権侵害の指摘に反論するアカウント計2160個を削除した。両社はいずれも、削除したアカウントが中国政府と繋がっていたと説明した。
中国国営CCTVの国際放送部門CGTNは、4月からの2か月間、英語を話すグローバルなメディア人材やSNSのインフルエンサー募集企画を行なった。優秀な参加者には、ワシントン、ロンドン、ナイロビにあるCGTN支局でパートタイムまたはフルタイムの「ストーリーテラー」になる機会を得たという。
オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の最近の分析によると、昨年以来、少なくとも14人の西洋人インフルエンサーが欧米のSNSに中国共産党の利益にかなう新疆関連のコンテンツを投稿した。これらはその後、中国外交官など政権管理のアカウントにより転載されていったという。
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