海上保安庁は12日、今年8月に噴火した小笠原諸島の海底火山・福徳岡ノ場が依然として活発に活動していると発表した。火山活動でできた新島の一部からは白色の噴気が上がる様子が見られた。漂着した軽石が経済活動に影響を与えている問題について、政府は対策会議を開き万全の対策を取るとしている。
海上保安庁によると、新島の周辺に広がる台地は11月はじめに観測した時よりやや縮小しているものの、島の大きさに大きな変化はなかった。
そのほか、新島の南東約20キロメートル付近の海水が直径約2キロメートルの範囲に渡り黄緑色に変色しているのが確認されたほか、軽石と思われる浮遊物も見られた。
観測の航空機に同乗した東京工業大学理学院火山流体研究センターの野上健治教授は「福徳岡ノ場における海底火山活動は沈静化したと は言えず、熱活動も未だに活発な状態である」とコメントした。
軽石により船が故障、産業に打撃
海底火山活動によって発生した軽石は経済活動に影響を与えている。火山から1000キロ以上離れた南西諸島では噴火の2か月後に軽石が漂着し、船の冷却ポンプを詰まらせるなど故障の原因となった。漁業や物流業が被害や影響を被ったほか、沿岸部の景観を損なったため観光業にも打撃を与えているという。
政府は10月28日から29日にかけて、国土交通省や環境省など関係省庁による対策会議を開催した。軽石の回収や船舶の安全確保、漁業被害への支援などの対策をとる。松野博一官房長官は29日の記者会見で「地元と連携して要望を聞きながら迅速かつ万全の対応を(関係省庁に)指示した」と述べた。
軽石が関東沖合に到達する可能性も
国立研究開発法人・海洋研究開発機構(JAMSTEC)はスーパーコンピューターを使ったシミュレーションを実施した。その結果、軽石が今後黒潮に乗って九州や四国、関東地方の沖合に到達する可能性があると予測した。
日本宇宙機構(JAXA)は人工衛星「しきさい」や欧州の人工衛星を使い、新島から発生した軽石の流れを国民が確認できるサービスを提供している。11月10日には、石垣島や宮古島の東方100キロあたりに軽石が確認された。いっぽう、雲などの気象状況で観測しきれないものもあるという。
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