百家評論 文筆家・三浦小太郎氏インタビュー

人権担当補佐官は実務こそ要 関連する法整備も必要不可欠

2021/11/13
更新: 2021/11/13

第2次岸田内閣が10日に誕生し、中谷元・元防衛相が人権担当補佐官として起用された。では、人権担当補佐官には何が求められ、どのように活動するべきだろうか。文筆家の三浦小太郎氏は衆院選後、大紀元の取材に対し、人権担当補佐官を設置するだけではなく、実務的な運用こそが要であると強調した。

できること、できないことを明確に

ー自民党が人権担当補佐官を設置することをどのように評価するか。

岸田総理が人権担当補佐官を置くことは非常に意味があることだ。それを公約として掲げている以上、しっかりやらないのであれば我々は自民党を支持してはいけない。

あとはアプローチをどうするのかの問題だ。先の国会ではミャンマーに対する人権非難決議が可決されたが、日本の総選挙直前にミャンマー軍が発砲した。非難決議を出しても、日本はミャンマー情勢に指一本触れることができなかった。

同じように、中国に対する非難決議が通っても同じことになりかねない。そのため、人権担当補佐官が設置されたら、その職務の範囲と内容をしっかり規定できるかどうかがポイントとなる。

―人権担当補佐官に求めるものはなにか。

人権担当補佐官はまず、日本国内に住む、ウイグルやチベット、南モンゴル、法輪功などの中国で迫害されている人々に対して聞き取り調査を行い、中国での現状を聞いて集める必要があると思う。それを動かぬ証拠として中国に突きつけないといけない。

今、日本はアメリカやイギリスから提供された情報をもとに行動している。これでは中国から、裏を取っていないとの口実で反撃されかねない。議論になった際に、日本が言い負けることがないようにしなければならない。

拉致大臣のように、置いたことがアリバイのようになってしまっては無意味だ。公にできない情報もあるかもしれないが、結果につなげる必要があると思う。

まずは足元を固めよ

―日本在住の外国人を弾圧や圧迫から守るために補佐官は何をすべきか。

中国で迫害されている方々の話を聞いていると、必ず中国大使館や本国から脅迫を受けている方に出会う。何かしらの心理的な圧迫を受け、なかにはスパイ活動を強要されるケースもある。

圧迫を受けていることを当事者自らマスコミに言えないのであれば、人権担当補佐官や警察に言えるようなシステムを作る必要がある。そのうえで日本政府が中国に対し、圧迫をやめるよう求めるべきだ。

―日本には多くの留学生や外国人が在住しているが、脅迫されたという話は多くは出てこない。

家族が中国にいる以上は、報道陣に語れないだろう。それこそ人権担当補佐官と警察が対応すべき問題だ。被害を受けている方を受け止める場を日本政府は作らなければならない。

そうすれば、被害者の権利を守りながら、中国に抗議することができる。このことを実行に移すことがおそらく一番必要ではないだろうか。

ー人権担当補佐官はどのように動くべきか。

人権担当補佐官は日本国内で活動すべきだ。中国へ渡航して何かを行うことは無理がある。中国の情報を取ることを期待されているかもしれないが、そのような無理なことをする必要はない。これがいますぐできて一番必要なことだと思う。弱いようで効くと思う。

日本に住んでいる人間の権利は日本が守る。中国での人権弾圧については、悔しいけどあまりできることは多くないかもしれない。難民問題や移民問題はこのシステムがなければ議論しても抽象論になりかねない。

スパイ防止法は必要不可欠

人権担当補佐官による被害者の保護というシステムと、スパイ防止法は絶対必要だ。これはパラレルだ。スパイ防止法は日本をスパイする人を取り締まるイメージばかりついているが、難民に交じって入って来るスパイを取り締まることで難民を守ることができる。

難民に関する制度がしっかりできていなければ、偽装難民ばかり来るようになる。その中にいつの間にか中国のスパイが紛れ込む可能性もある。

逆に言えば、政府がしっかり制度を整備すれば留学生を悪者扱いせずに済むと思う。移民に関しても、端から危険分子扱いするのではなく、システムをきちんと作ったうえで対応すべきだ。一定程度移民を受け入れることは世界的にやむを得ないことだと思う。

ー制度設計はどのようにするべきか。

システムは一朝一夕でできるものではない。そこは正直に言えば、台湾から協力を仰がないといけない。いまの韓国はよい状態とは言えないが、北朝鮮に対するスパイ防止のテクニックを学ばなければならないだろう。

まとめ

今すぐできるかどうかは別として、政府が行うべきことは人権担当補佐官や警察の権限を強化することと、スパイ防止法を作ることだ。日本国内に在住する中国からの留学生や弾圧の対象となっている人々に対して行われている脅迫等を解決するために、彼らを受け止める窓口を日本政府は作るべきだ。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。