10兆円ファンドで大学研究活性化「夢のサービス、日本から湧き出てくる」甘利明自民党幹事長が意気込み

2021/10/12
更新: 2021/10/12

政府は大学による次世代技術研究の活性化のために、10兆円の大学支援ファンドを創設している。菅政権時代に公表された計画では年数千億円の運用益を見込んで、研究費や人材育成に充て、安定投資を実現する。

この計画について、11日、甘利自民党幹事長がソーシャルメディアで紹介した。3Dプリンターや量子コンピュータの発明が日本発だったと強調し、「次の時代を担う夢の製品やサービスはどんどん日本から湧き出てくるようにしたい」と意気込みを語った。

「原理や発明は日本初。でもビジネスでは欧米に負ける。日本の負のお家芸だ」と自虐的に語る甘利氏は、日本の研究分野には将来的に高い価値を持っている研究が多いと強調。こうした研究を商業化・産業化に結びつけていくため、大学研究ファンドを創設すると述べた。

このファンドは、文部科学省所管の国立研究開発法人である科学技術振興機構(JST)に設置される。政府出資、財政融資、民間投資を受けて、運用益を大学に配分する。

8月、内閣府と文部科学省は、2022年度の概算要求で、大学ファンドに5兆円規模の予算を盛り込むことを決めた。ファンドは将来的に10兆円規模に広げる。

内閣府が立ち上げたワーキンググループの座長を務めるコロンビア大学の伊藤隆敏教授は、年間3000億円の支援実現のために、長期支出(ペイアウト)目標を3%、これに加え長期物価上昇率1.38%以上とする取りまとめ案を報告した。つまり、10兆円規模のファンドの運用益3000億円を対象の大学に配分する。

10月8日の内閣府の会議資料では、この計画に参画する大学の数は8校程度、日本の大学が持つ研究力の強みとしては物理学、化学、臨床医学があげられ、投資分野の有力候補になっている。

ファンド運用には「先駆技術の研究に取り組む優秀人材の確保が必須」と資料にある。そして、利益配分や資本拠出に関わる大学は、世界のトップ研究大学に相応する制度改革、大学改革に協力姿勢が求められる。

しかし、大学や技術漏洩防止の意識の低さも、先の調査で露呈している。9月の経済産業省と文部科学省による共同報告によれば、日本に留学する外国人学生に対して「安全保障に関わる技術の持ち出しを禁止する」との注意喚起を行なっていない大学は6割に上ることが明らかになった。

この報道をうけて、小林鷹之・経済安全保障担当大臣は、機微技術の流出防止は「政府・企業のみならず、アカデミアの経済安保に関する意識向上と体制強化は必須」との考えを示した。

国も技術安全保障の強化を進めている。文部科学省は「科学研究費助成事業(科研費)」について、2021年度以降は申請者が外国の研究資金を受けている場合、その申告を義務化する。これは中国共産党の海外人材招聘計画を念頭にしているとされる。

(佐渡道世)