米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)12日付は、中国の習近平政権は現在、中国IT企業が収集した個人・企業情報に関する膨大なデータを支配しようとしていると指摘した。中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員は10日、国内のデータ統制を強化するための「データ安全法」を成立させた。
報道によると、中国最高指導者は、膨大な個人および企業のデータを収集してきたIT大手が力を持ちすぎて、現体制を脅かす存在になり得ると認識し、強く警戒している。この懸念から、中国当局は、電子商取引最大手アリババ集団傘下の金融会社、アントグループの上場計画を中止した。
習近平氏は2012年、国家主席に就任した直後、IT大手の騰訊控股(テンセント)を視察した。当時、テンセント創業者で最高経営責任者(CEO)の馬化騰氏らが、習氏に対して、同社がネットユーザーの利用習慣などを分析するプロセスについて説明を行った。習近平氏は「この取り込みが重要であることを目にした。このような膨大な情報の中で、充分なデータを手に入れ、それから最も客観的、最も正確な分析を行った」「(分析は)政府に助言を行う時に貴重である」と肯定的な姿勢を示した。
8年後の今、中国当局はテンセント、アリババ集団、TikTokの親会社であるバイトダンスなどハイテク大手に対して、ソーシャルメディアや電子商取引などで集めたデータを公開するよう要求している。
IT大手が収集したデータの急増と、当局のデータ入手への強い願望の下で、中国当局は、企業とのデータ共有やデータ管理強化をめぐって新しい法律と法規を相次いで打ち出したという。
同報道は、中国当局が10日に成立させた「データ安全法」は、当局の要求に抵抗するIT企業を締め付ける目的があるとの見方を示した。対象は、中国企業だけでなく、外資企業も含まれる。外資企業は「データのローカライズ(現地化)」を求められ、データの国外移転を制限され、データの中国国内保存を義務付けられる。中国当局は、「データ安全法」を通して、「国益にとって重要なデータの管理を強化していく」と主張。
政策の策定に関わった中国当局者はWSJの取材に対して、中国当局はますます民営企業が蓄積してきたデータを国家資産と見なしているとした。当局指導部は、中国企業が外国のビジネスパートナーとデータを共有することで、中国の国家安全保障が脅かされると危惧しているという。
「データ安全法」の成立は、中国当局が過去にIT企業を取り締まった際、法的根拠がなかったことが反映した。
報道によると、習近平国家主席は指導部内の会議で「データを掌握すれば、主導権を掌握できる」と発言したことがあり、ビッグデータ分野の支配に強い意思を見せたという。
(翻訳編集・張哲)