最近、中国の「野生ゾウの北上ツアー」が話題になっている。昨年3月以降、雲南省シーサンパンナに生息していた野生のアジアゾウの群れ(15頭)が、生息地を離れて800km以上(直線距離で約500km)北上し続け、6月2日夜に人口850万人の省都・昆明に到着した。
複数の中国メディアによると、群れが行く先々で、住民が緊急避難したり、ドアや窓を閉めた家に隠れたりしていた。5月末までの40日余りで、この群れは移動中に412件の物損事故を起こし、農作物などの被害が約680万元(約1億1700万円)にのぼった。
地元の森林局は、ゾウの通り道に障害物を設置したり、食べ物でおびき寄せたりして、ゾウが人口密度の高い北部地域に行くのを阻止しようとしている。群れが昆明に入ってからの数日間は、百人以上の建設車両の運転手が昼夜を問わず群れの動きを追っていた。群れが村や人口密集地に向かうと、すぐに指定された場所に車で移動し、ゾウの行く手を阻んだ。
中国メディアは5日、北上していたゾウの群れにようやく方向転換の兆しが見えたと報じた。同日午後3時10分時点で、群れは南西から北西に12.1km移動し、昆明市晋寧区双河郷から夕陽郷に入っている。
中国雲南大学のアジアゾウ研究所の陳明勇所長は中国メディアの取材に「アジアゾウが中国でこれほど長い距離を北上したのは初めてであり、非常に珍しい現象である」と述べた。
しかし、なぜゾウの群れが北上しているのか、明確な答えは出ていない。中国メディアは専門家による3つの分析結果を紹介している。1つ目は、自然保護区内のアジアゾウの数が数十年前の200頭以下から約300頭に増加しているが、森林伐採により生息地が減少し、生息環境が悪化していること。2つ目は、移動中の農作物の豊富さと旅の安全性が、ゾウたちの引き返しを思いとどまらせたこと。3つ目は、先頭の若いメスのゾウが、移動の経験がなく、適切な生息地を見つけられないため、北への「放浪」を続けなければならないことであるという。
ロンドン動物園協会のコンサルタントであるベッキー・シュウ・チェン(Becky Shu Chen)氏は米紙ニューヨーク・タイムズに対し、「ゾウが自力でシーサンパンナに戻るのが理想的だが、そうなる保証はない」と述べた。2000年代初頭、インドで数十頭のゾウが川の島に迷い込んだ。地元住民が無人の場所に追いやろうとしたが、「ホームレスのゾウの群れ」は今も近くに留まっているという。
また、群れがどこに行き、いつ止まるのかは、誰にもわからない。現在、地方当局は食料の投下で群れの南下を誘導しながら、モニタリングの実施、早期警報、避難勧告などの対応措置を講じている。
北上した15頭とは別に、昨年末から南下を始めた17頭のゾウの群れが、5月24日未明、勐腊(モウロウ)県勐侖(モウリン)鎮のシーサンパンナ熱帯植物園に到着した。群れは、前方の川が増水しているため、何度も子連れでの渡河に失敗し、その場に留まらざるを得なかった。
(翻訳編集・王君宜)
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