中国、北京大など12大学に「未来技術学院」設置 ハイテク分野強化狙う 全体主義体制が「ネックになる」

2021/05/31
更新: 2021/05/31

中国教育部(文部科学省に相当)はこのほど、北京大学や清華大学など12大学に、「未来技術学院」を増設すると発表した。政府系メディアによると、同学院の設置の目的は、人工知能(AI)技術、量子情報科学、データ・サイエンスとビックデータ、海洋技術を含む重要技術分野の研究開発強化に力を入れ、「製造強国」「サイバー強国」などを実現することにある。

12大学は、北京大学、清華大学、北京航空航天大学、天津大学、東北大学、ハルビン大学、上海交通大学、東南大学、中国科学技術大学、華中科技大学、華南理工大学、西安交通大学である。

教育部が公表した通知は、未来技術学院を通して、「科学技術のイノベーションにおいて将来リーダーになる人材を育成するための新しいモデルを模索する。今後10~15年の間に破壊的な技術(disruptive technologies)を目指し、常規を打破し、制約を打破し、障壁を打破し、先見性を持ち、将来の発展をリードできる技術革新リーダーの育成に注力する」「『中国で製造』を『中国で創造』に転換し、グレードアップすることを推し進めていく」とした。

国営新華社通信27日付によると、北京大学の未来技術学院は、生物医学と分子医学の2つの分野に集中する。同学院は今後、毎年50人の大学生、100人の大学院生と50人の博士を応募し育成していくという。

また、同報道によると、中国当局は将来4年間で、国内の未来技術学院の数を20~30校に増やす計画だ。

浙江省に住む教育専門家の蒋さんは28日、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して、中国国内の政治体制では、「中国で創造」は実現できないと指摘した。

蒋さんは、中国の大学の管理層は、学術研究を行う専門家ではなく、専門知識を持たない共産党員に支配されていることを挙げた。

「中国の大学では、(専門技術の)素人が研究者の上司になっているだけでなく、言論の自由や情報の自由が全くないことも深刻な問題だ。そのうえ、学術論文のねつ造という道徳観に関わる問題もある」

蒋さんはまた、中国国内の研究者や科学者が、海外の技術発展、トレンドに関する情報を得るのに苦労していることにも言及した。

「中国当局は海外情報サイトへのアクセスを禁止し、遮断しているために、中国の研究者らはVPN(仮想プライベートネットワーク)を使わないといけない。このような状況で、どうやってイノベーションできるのか不思議に思う」

蒋さんは、中国当局は近年、VPNの使用を厳しく取り締まっていると批判した。研究者は海外の技術情報取得がますます難しくなっているという。

北京市の元教師、童さんは、数十年前に米国留学した科学者によって、中国当局は核兵器やミサイルの技術を掌握できたと指摘した。「今、外国の情報サイトにアクセスすることさえ禁止されている。未来技術学院を設置しても、何も役に立たないのではないか」

米国のトランプ前政権は、複数の中国企業に対して禁輸措置を発動した。バイデン現政権は前政権の対中制裁を継続し、4月に天津飛騰情報技術公司、上海集成電路技術産業促進センターなど、スーパーコンピュータや半導体産業に関わる中国企業と団体の7機関を禁輸措置対象として追加した。

RFAは、米企業から技術や部品を得られない中、一部の中国企業は稼働停止を余儀なくされたとした。

(翻訳編集・張哲)