中国電子商取引大手のアリババグループがベルギーに建設中の巨大な物流拠点は、中国政府に協力してスパイ活動に従事する可能性があるとして、最近、同国司法相は議会で懸念を表明した。
ベルギーのリエージュ空港(Liege Airport)で建設中の物流センターはアリババの子会社によって運営されている。
同物流センターについて、ベルギーのフィンセント・ファンクイッケンボルヌ(Vincent Van Quickenborne)司法相は5日、中国はすべての民間企業に国の情報機関への協力を義務付けているとし、中国の情報機関の工作員が空港の機密エリアや保安エリアなどアリババが保有する商用データや個人データにアクセスできる可能性があると警告した。
中国は2017年、民間企業などに当局の情報収集活動への協力を義務付ける「国家情報法」を施行した。それによると、海外で事業を展開する中国企業を含む全ての企業は中国の諜報機関による施設の徴用を受け入れ、必要であれば人員の配置を受け入れるよう義務付けた。
ファンクイッケンボルヌ司法相は、同法律を念頭に、「アリババのような企業は、情報機関の工作員のためのポストを社内に用意することが求められている」と指摘した。
また、「これらの背景には、商業的情報の目的に加え、より広範な経済的および政治的な配慮がある」とした。
これに先立ち、ベルギーの情報機関は、中国が政治的交渉の切り札として経済力を利用する可能性があると警告を発していた。
リエージュ空港はベルギーの東部に位置し、同国最大規模の貨物取扱量を誇る貨物空港である。ヨーロッパでは7番目に大きい。
ベルギー連邦政府とアリババは2018年末、物流インフラへの投資を含む包摂的な貿易振興について合意し、覚書(MOU)に署名した。これは世界電子貿易プラットフォーム(eWTP)イニシアチブの一環としている。
eWTPとはアリババ創業者のジャック・マー(Jack Ma)氏が提起した、越境ECにおける中小企業や個人の参入障壁を下げ、海外展開を支援する構想である。
アリババ傘下で物流を手掛ける「菜鳥網絡」(ツァイニャオネットワーク)はリエージュ空港と、物流拠点を建設するための総面積22万平方メートルのリース契約を締結した。初期投資として7500万ユーロ(約99億円)を投入した。同プロジェクトは現在、完成に近づいており、現地当局者によると、年内にも運営が開始される見込みだという。
北京による香港への政治的な弾圧や、新疆ウイグル自治区での人権迫害などにより、中欧関係の亀裂は深まるばかりだ。今年3月、欧州連合(EU)は1989年の天安門事件以来、初めて人権侵害を理由に中国当局者に制裁を科した。
さらにEUは最近、7年近くかけて中国とようやく合意にこぎつけた包括的投資協定(CAI)の欧州議会で承認手続きを停止した。
(大紀元日本ウェブ編集部)