日本とASEAN インド太平洋の安保強化に取り組む

2021/05/02
更新: 2021/05/02

日本政府は継続的にASEAN(東南アジア諸国連合)と緊密に協力を図りインド太平洋全域の公衆衛生、災害管理、サイバーセキュリティ分野における安保強化に取り組んでいる。

2021年3月23日に日本とベトナムのASEAN大使が共同議長を務め、仮想形式で日ASEAN合同協力委員会の第15回会議が開催されたが、ここでも新規取り組みや継続的なイニシアチブに対する日本政府の高い関与と寛大な財政支援の意思が実証された。

ASEAN加盟国首脳陣の発表によると、パンデミック渦中にも関わらず、日ASEAN協力プログラムでは、日ASEAN統合基金(JAIF)を通じて日本から約40億円(約4,000万米ドル)を拠出する57件のプロジェクトが展開・承認された。

ベトナム通信社(VNA)の報道では、今後発生し得るパンデミックなどの健康危機に対する地域の準備態勢と対応能力の強化は今回の会議でも中心的な議題となったが、同措置に対する日本の献身はASEAN感染症対策センター(ACPHEED)設立への投資を通じて実を結びつつある。日本の専門家等はASEAN感染症対策センターの設計とその要員の研修に協力することに意欲を示している。

日ASEAN統合基金が発表した声明は、「この地域で課題となっている地理的な脆弱性は日本にも存在している」とし、「こうした現状を認識し、日本とASEANは共通の課題に対処するために協力を続けていく」と述べている。

ベトナム通信社が伝えたところでは、ASEAN感染症対策センター設立および災害管理とサイバーセキュリティプログラム推進に向けた日ASEAN統合基金の支援に対して、ASEAN加盟国首脳陣は感謝の意を表している。

日ASEAN統合基金の報告によると、2020年に東南アジアは嵐、洪水、火災、地震、火山噴火などを含む520件の自然災害に見舞われている。ASEAN災害管理に焦点を当てる日本は、ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)を通じて支援を行っている。2021年2月下旬には、同センターはタイのサムットサーコーン県で立ち往生した数千人の漁業者等に供給するために救援物資を動員した。

また、日ASEAN統合基金からは、マレーシアのスバンに所在する国連人道支援物資備蓄庫(UNHRD)の救援物資の備蓄にも資金が拠出されている。

日ASEAN統合基金は学校教材や教師の研修を提供することで、災害に関連するASEAN加盟諸国の教育を支援しているだけでなく、ASEAN加盟諸国全域の情報通信技術インフラやシステムの強化にも資金を提供している。日ASEAN統合基金の事務局が発表したところでは、2016年から2020年の間に約1,300人のASEAN加盟諸国の地方自治体職員が同基金の支援プログラムで災害管理の研修を受けている。

日本はまた、ASEAN加盟諸国のサイバーセキュリティイニシアチブも支援している。同事務局によると、日ASEAN統合基金が資金提供する日ASEANサイバーセキュリティ能力構築センター(AJCCBC)では、ASEAN加盟諸国のサイバーセキュリティ専門家を対象として、マルウェア分析とデジタルフォレンジックに焦点を当てた4日間研修が2021年1月と2月に2回開催されている。2021年3月には、サイバー犯罪事件対策に関する3日間研修も同センターで実施された。

同センターでは、コンピュータセキュリティ問題に対して学生や若年層エンジニア等がその腕を競うコンテスト「サイバーSEAゲーム(Cyber SEA Game)」が定期的に開催されている。

「公共インフラや重要な情報インフラを運用できる有能なサイバーセキュリティ専門家が不足」しているASEAN加盟諸国の現状を認識して2018年に設立された同センターは、2022年までに700人を超える高水準のサイバーセキュリティ専門家を育成することを目指している。 

(Indo Pacific Defence Forum)