中国漁船、南シナ海で毎日260トン漁獲可 漁場奪われ「フィリピン漁師は疲れ果てている」保護団体が指摘

2021/04/19
更新: 2021/04/19

フィリピンの環境保護団体は15日、西フィリピン海に集結している200隻以上の中国の漁船団は、毎日260トンもの魚を獲る可能性があると指摘した。この中国船による乱獲で、フィリピンは魚不足に陥る恐れがあるという。当局は、漁船団には中国が軍事訓練を施した民間漁船「海上民兵」が含まれるとして退去を求めている。

ホモンホン環境救助機構(HERO)のビジャルド・アブエネ(Villardo Abuene)会長は、「彼ら(中国漁船)は私たちの海洋資源を侵略している。実際の侵略よりも悪いことだ。さらに私たちの主権を侵害している」と、強い言葉を使い批判した。

HEROは、西フィリピン海海洋警備当局(NTF-WPS)の報告書を引用し、南シナ海のユニオン礁とパグアサ諸島周辺にいる中国船団は、それぞれの船が毎日少なくとも1トンの魚を獲ることができる大型船だという。フィリピンの漁師の漁獲量は1隻あたり50〜100キロであり、中国漁船団は10〜20倍に相当するという。

現地メディアABS-CBNの取材に対して、アブエネ会長は、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)に覆われた地域にいる魚はフィリピン人のためにあり、漁師のものだと主張した。「彼らは疲れ果てており、苦しんでいる。漁師はかなり影響を受けている」と述べた。

フィリピンのルソン島西部サンバレス州の漁師たちも、同国の豊かな伝統的漁場として知られるスカボロー礁にいくのをやめた。中国の沿岸警備隊や一部の中国漁船によって漁場を奪われ、漁獲量が減少した。

アブエネ氏は、フィリピン農業省漁業・水生資源局に対し、西フィリピン海における中国の乱獲について調査するよう求めている。

中国漁船団を「警備」する軍戦艦と海警局船

フィリピン政府が12日に発表した海洋警備の報告によれば、中国軍や海警局船も漁船団の周辺にいることがわかり、中国共産党は力を背景にした「軍民一体」で南シナ海の権益と海洋進出を行っていることが明白になった。

報告によれば、中国漁船はガベン礁で136隻、ジュリアン・フェリペ礁で9隻、チグア礁で65隻、ミスチーフ礁で6隻、スビ礁で3隻、パグアサ島付近で4隻、リカス島付近で1隻、コタ島付近で5隻、アユンギン礁で11隻停泊していることが確認された。スカボロー礁周辺には中国海軍の戦艦2隻と中国海警局の公船3隻も確認された。ほかにも、中国漁船周辺の各地にはミサイル艇が「警備」行動をとっているという。

フィリピンのドゥテルテ政権は、新型コロナウイルス(中共ウイルス)蔓延を受けて、中国からワクチン250万回分が供与されており、対中姿勢の軟化が懸念された。しかし、領有権に関しては中国に対して強い言葉を使って批判している。

フィリピン外務省は14日、自国の排他的経済水域も含めた周辺海域に1カ月にわたり中国漁船団が停泊していることについて、外交ルートを通じて中国に抗議した。ロドリゴ・ドゥテルテ政権は「両国が望まない敵対関係に発展する」リスクがあるとの声明を発表し、海上民兵を含む船団の停泊を批判した。

フィリピン大統領府首席法律顧問は声明で「当国は相互の懸念と利益の問題については厭わずに交渉する構えだが、当国の主権については交渉の余地は全くないことを覚えておいてもらいたい」と厳しい口調で非難した。ハリー・ローク(Harry Roque)大統領報道官も、「自国国土や排他的経済水域について当国は1ミリ足りとも譲るつもりはない」と表明している。

サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、4月初旬、フィリピン軍は同国記者たちをEEZ上空の空中主権パトロールに招待した。記者たちは、フィリピン軍の飛行機が特定の島に接近すると、中国が実行支配する島の前哨基地から「離れろ」「すぐに立ち去れ」という無線警告を受けた。フィリピン軍機は警告を無視した。ABS-CBNの記者は8日、フィリピン軍の船と航行する民間船で取材中、中国の沿岸警備隊の船に妨害され、追尾を受けた。これらのことは、フィリピンの領海内で起きた。

オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は2016年7月12日、中国が独自に主張する南シナ海の90%を囲う境界線「9段線」は「国際法上の根拠がなく、国際法に違反する」との判決を下した。加えて、中国による人工島造成なども正当性はなく、排他的経済水域や大陸棚が認める国際法上の「島」ではないと判断した。この訴訟は2013年、伝統的な漁場などを同地に抱えるフィリピンが提訴したもの。しかし、中国はこの仲裁裁判所の判決を受け入れず、引き続き領有権を主張し、軍事施設などの建設を進めている。

南シナ海における中国の拡張行動が目立つなか、フィリピン軍と米軍の約2週間程度の合同軍事演習は12日、フィリピンで始まった。米軍とフィリピン軍合わせて約1000人が参加する。

この合同演習は、米ロイド・オースティン(Lloyd Austin)国防長官と、比デルフィン・ロレンザーナ(Delfin Lorenzana)国防相との電話会談の数時間後に発表された。米国防総省によれば、両長官は「南シナ海の状況と、ウィットサン礁海域における中国の海上民兵の集結について議論した」という。防衛協力を深めるために、オースティン長官は「南シナ海における脅威の状況認識を強化する」ことを提案した。

(翻訳編集・佐渡道世)

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