内閣府は19日、2020年の外交に関する世論調査の結果を発表した。安全保障分野で協力関係にあるアメリカやオーストラリアに親しみを感じるとの回答は多数を占めたが、領土問題を抱える中韓ロとの関係では、否定的な意見が目立った。今回の調査では、全国の市区町村に居住する満18歳以上の日本国籍を有する者を対象に行われ、1865人から回答が得られた。また、コロナウイルスの感染防止のため郵送で行われた。
親近感の有無は二国間の関係を反映
調査対象国について親しさを感じるかとの調査項目では、アメリカとオーストラリアに親近感を抱くという回答が大多数を占めていた。なかでも対米関係では、親しみを感じるとの回答は84.0%を占め、最高記録の84.5%に迫る勢いを見せた。これは日米間のヒト・モノ・カネの緊密な連携のみならず、安全保障の分野における信頼関係と絆の存在が大きい。
いっぽう、中国、ロシア、韓国に親しさを感じるとの回答は、いずれも過半数を下回っていた。日本はこれらの国と領土問題を抱えており、いずれも解決のめどが立っていない。内閣府によると、中国、ロシア、韓国に親しさを感じるとの回答は若年層に多く、逆に親しさを感じないのは高年齢層が中心だ。この傾向からも、政治的・歴史的問題が二国間の関係構築のネックとなっていることが分かる。
中国に親しみを感じないと答えた人は、大きな事件の発生に伴い増加し続けている。親しみを感じる人は1980年代前後には70%台で推移していたが、天安門事件の起きた89年に20ポイント近く下落、その後も反日デモの頻発や尖閣諸島問題で下落し続けている。
他方、韓国に対して若年層が親近感を抱くのは、同国の文化的求心力による部分が大きい。韓国のファッションや映像作品、料理などは、たびたび「韓流」ブームを巻き起こしている。トレンドマーケティングのFRIL labの調査によると、10~20代の女性が「ファッションで参考にしている国」の1位は韓国だった。
日本との関係
日本との関係は良好か否かという調査項目でも同じような傾向が見られた。アメリカとオーストラリアとの関係は肯定的な意見が大多数を占めているのに対し、中国、ロシア、韓国については、関係が良好ではないとの回答が多数を占めた。
二国間の関係は、社会体制や国益によって大きく影響される。地域安全保障枠組みである「クアッド」の一員として、日本はアメリカやオーストラリアと安全保障上の利益を共有している。また、いずれも成熟した民主主義国であり、人権や環境保護など同じような課題に取り組んでいる。一方、日本は中国、ロシア、韓国と領土問題を抱えており、社会制度の違いも一定の影響を与えている。
内閣府は調査で、今後の両国関係の発展は、アジアおよび太平洋地域にとって重要だと思うかについても聞いた。日本の同盟国であるアメリカとの関係の発展を重要だとする人は90%を超え、中国やオーストラリアについても70%を超える結果となった。一方、韓国との関係の発展を重要と考えないという回答は、過去最悪の40.4%に上り、徴用工問題など文在寅政権が対日強硬姿勢を取り続けた結果を反映するものとなった。
北朝鮮問題
内閣府は北朝鮮問題についても調査した。北朝鮮への関心事項では、「日本人拉致問題」を挙げた人の割合が83.3%と最も高く、「ミサイル問題」(73.2%)、「核問題」(70.1%)、「政治体制」(47.8%)が続いた。内閣府によると、「日本人拉致問題」については高年齢層が最も関心を持っており、「ミサイル問題」については若年層が最も関心を持っていた。
(王文亮)
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