中国の王毅外相が11月24~25日まで訪日する。茂木外務大臣と外相会談を行うほか、25日は菅総理大臣とも会談する見通しだ。米中関係が悪化するなか、中国は訪日を通じて、米とその同盟国による「中国包囲網」を切り崩す思惑があるとみられる。専門家は、懐柔策を図る中国側の言葉を受け入れるべきではないと主張する。
菅政権は、中国への経済的依存と、尖閣諸島周辺における中国の威圧的な行動を含む安全保障上の懸念への対応のバランスを模索してきた。
菅首相はこれまで、厳しい対中発言を避けてきた。しかし、オーストラリアと準安全保障協定を結び、ベトナムやインドネシアへ初の海外訪問を行うなど、中国の影響力に対抗する動きを見せている。
茂木敏充外相は2国間の会談に先立ち、23日、記者団に対して「両国間には様々な懸案事項がある。ハイレベルな会談を通じて、一つ一つの問題を解決していくことが重要だ」と述べた。
NHKによると、日本側は、沖縄県の尖閣諸島の沖合で中国当局の船が領海侵入を繰り返すなど、中国による東シナ海や南シナ海への進出の活発化や、中国が統制を強める香港情勢について懸念を伝える意向だという。
王毅外相の訪日について、元在沖縄米軍海兵隊外交政策部次長で米政治学者のロバート・D・エルドリッヂ氏は大紀元の取材に応じた。
エルドリッヂ氏によると、今後の日中関係について「隣国であるため、一定の関係の維持は必要」としながらも、「(政治的側面で)中国は日本に対する良い感情を抱いていないため、アジアや国際社会において、日本の発言権を最小限にすることを狙うだろう」と考えている。
エルドリッヂ氏は、懐柔策を図る中国の外交政策を念頭に、日本は中国の表面上の言葉を受け入れるべきではないだろう、と語った。
さらに、人権弾圧など中国の長年の国内問題について「近代的な国家になりたければ、その必須条件である人権の尊重、民主主義、信条・宗教の自由を認めなければならない」と述べた。また、対日関係については、尖閣諸島は日本の固有領土であることを認め、威嚇行動を停止すべきだと話した。
米トランプ政権は過去の政権にないほどの対中強硬姿勢を貫いてきた。王毅外相訪日直前である11月20日、ロバート・オブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、北村滋国家安全保障局長と米軍横田基地で会談している。米大統領選の結果はまだ決定しておらず、地域における「力の空白」が生じないよう、地域同盟国や友好国との関係を確認したとみられている。時事通信などによると、両氏は「自由で開かれたインド太平洋」実現に向け、日米、日米豪印が協力する重要性について改めて認識を一致させた。
(文・佐渡道世)
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