中国通信機器、華為技術(ファーウェイ)に対する米政府の半導体輸出規制は米東部時間9月15日午前0時に発効した。これまでファーウェイが強く依存してきた日韓台3カ国の大手半導体メーカーは、同社への供給を即時停止すると発表している。
米商務省は8月、ファーウェイに対して新たな制裁措置を発表した。この措置では、米国の技術や設備を利用する外国企業は、ファーウェイへ供給する前に米政府の許可を得なければならないと定めた。
15日より、日本の半導体メモリー大手メーカーのキオクシア(旧東芝メモリ)、東芝、三菱電機は、ファーウェイへのフラッシュメモリーやハードドライブ、半導体などの出荷を見合わせた。ソニーは、15日前にスマホカメラ用のCMOSセンサーの供給を停止した。
共同通信によると、ファーウェイ・ジャパンの王剣峰(ジェフ・ワン)会長は8月26日、「日本企業は、ファーウェイのグローバル・サプライチェーンにおいて、極めて重要な役割を担っている」との認識を示した。ファーウェイは2018年、日本企業から7210億円規模の部品や機器を購入した。19年の購入額は前年比50%も増加した。
また、日経アジア・レビュー9月10日付によれば、英市場調査会社オーバム(Omdia)の南川明シニアディレクターは、日本、韓国、台湾の3カ国の企業は毎年、合計約265億ドル(約2兆7919億円)規模の部品やコンポーネントをファーウェイに供給してきたと指摘した。3カ国の企業は同社にとって非常に依存度の高いサプライヤーである。
韓国のサムスン電子、サムスンディスプレイ、LGディスプレイ、およびSKハイニックスなどの企業もいずれもファーウェイへのスマホ向けパネルの供給を停止すると発表している。
台湾TSMCは早くも5月にファーウェイからの新規受注の受付を停止しており、米国が禁止令を発効した日から同社への供給を即時停止すると8月に発表していた。 また、メディアテック( MediaTek )やナンヤー・テクノロジー(Nanya Technology )など台湾の大手半導体メーカーも、米国の禁止令に従うと発表している。
TSMC社とサムスン電子はファーウェイへの出荷を停止するとの発表後に、受注が大幅に増加している。インテル、グーグル、アップル社、AMD、エヌビディア(NVIDIA)などの大手企業はTSMC社への注文を増やしており、TSMC社の8月の売上高は単月としては過去最高を記録した。
サムスン電子はこのほど、米電気通信事業最大手ベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon)から、66億5000万米ドル(約7006億円)規模の5G関連受注を獲得した。韓国の通信機器輸出史上、最大規模の受注となった。その後、米クアルコム(Qualcomm)も同社に対して、8億5000万米ドル(約896億円)の5G関連チップを発注した。
日韓台3カ国の企業の中に、米政府に対して輸出許可を申請している企業がいるとみられる。しかし、現時点では、米政府の承認を得た企業はまだない。米政府は、中国当局がチップ技術を利用して、世界各国のユーザーを監視し、安全保障上の懸念があるとして、ファーウェイへの制裁措置を強化している。このため、各企業に対して承認を与える可能性は低いとされる。
一方、半導体受託生産の中国最大手「中芯国際集成電路製造(SMIC)」は9月15日、「関連する国および地域の法律を厳守し、ファーウェイへの継続的な供給を米国側に申請した」と発表した。しかし、SMIC自体が中国軍とのつながりがあると推測されており、米政府の輸出規制対象に追加される可能性が高い。また、SMICが持つ14ナノメートル技術は、ファーウェイの需要と合致していない。
ファーウェイが2018年の米中貿易戦以降、半導体部品の在庫確保を強化しており、米の制裁措置でさらに在庫を増やそうとしている。このほど、同社は、台湾から半導体チップを中国に輸送するのに、航空機をチャーターしたと報じられた。しかし、同社の在庫は今年末か、来年半ばまでしか続かないと業界は推測している。
台湾メディアによると、台湾半導体メモリ大手、南亜科技(ナンヤ・テクノロジー)の呉嘉昭会長はこのほど、「関連部品が不足となれば、ファーウェイはスマホやノートパソコンなどの製品の組み立てができなくなる」と述べた。
台湾シンクタンク、国防安全研究院の蘇紫雲所長は、「米国が禁止令を発効した後、ファーウェイは比較的ローエンドの交換部品しか使えないため、製品競争力の低下は確実で、10年前の製品レベルに戻る可能性さえある」との見解を述べた。
(大紀元日本ウェブ編集部)
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