またも波紋!習近平氏 演説で香港抗議活動のスローガンを引用

2020/09/14
更新: 2020/09/14

中国の習近平国家主席は9月8日、北京で行われた演説で、香港市民が民主化運動の中で使ったスローガンを引用し、波紋を呼んだ。

世界各国で中共ウイルスが引き続き猛威を振るっているなか、習近平当局は9月8日、感染拡大防止に貢献したとして、医師や軍人らに対して表彰式を行った。また、習氏は、感染拡大の中で中国の若者の協力的な姿勢を称賛し、「この世には、天から降りてきた英雄はいない。身を挺する凡人しかいない」と扇情的に述べた。

香港のネットユーザーは、習近平氏のこの発言に反発し、中国当局は2019年の民主化運動で使われたスローガンを盗用したと批判した。このスローガンは、昨年、香港中文大学と香港理工大学の構内に書かれた。香港警察が両大学を包囲し、構内にいた学生らデモ参加者を制圧した。学生らはこのスローガンを使って励まし合った。

当時のデモ抗議者で、現在、海外に亡命した香港市民、李玨熙(りかくき)氏が2015年、兄の李政煕(りせいき)氏の区議会選挙活動のため、このスローガンを考案した。李政煕氏はその後、デモ参加者らが使う防毒マスクやゴーグルなどを扱う店、「国難五金」を経営。昨年の抗議活動で、香港警察は李政煕氏を拘束した。李氏はフェイスブックで声明を発表し、初めてこのスローガンを投稿した。これ以降、香港市民は相次いでこのスローガンを使うようになった。

一方、李玨熙氏は、中国当局が同スローガンを無断使用したことに怒りを露わにした。同氏はフェイスブックで、中国共産党は「地球上の最も恥知らずの邪悪な組織だ」とし、「私の故郷(香港)を破壊し、香港の人々を殺害して拘禁した。私も仕方なく海外に亡命している。今、私が香港に残した思いを利用して、生物武器の被害者を騙そうとしている」と非難した。

李政煕氏は香港紙・蘋果日報の取材に対して、「習近平氏が宣伝してくれたことに感謝する」と皮肉を込めてコメントした。李氏によると、習近平氏の発言を受けて、同スローガンがプリントされたTシャツの売上げが普段と比べて5割も増えた。

「国難五金」もフェイスブックで、習近平氏への「感謝」を示した。

ツイッター上では、中国人ネットユーザーは相次いでコメントを書き込んだ。

習近平氏のスピーチライターチームに「『高級黒(表では褒めていると見えるが、実で嘲笑している)』の人がいるのではないか」

「このスピーチを書いた習近平氏の秘書は、個人的な考えを入れたね」

「この秘書は絶対に香港の抗議者を敬っている。主席に抗議者らのスローガンを言わせた。罪は極めて大きいから、命の保証がなさそう」

「習主席も密かに香港抗議者を崇めているのかもしれない」

「習近平氏のせいではない。その醜態を晒すように、誰かにはめられたのだろう。私たちはここに座って芝居を見ていればいい」

一方、習近平国家主席は8日の表彰式で、中共ウイルスの初動対応の遅れ、情報隠ぺいに関する中国当局の責任、感染拡大を警告した中国人医師の李文亮氏などに言及しなかった。その代わりに、中国側の責任を厳しく批判している米国のトランプ政権に対して、習氏は「利己主義や責任転嫁は自国だけでなく世界に損害をもたらした」と述べた。

(翻訳編集・張哲)