中国の臓器移植では、無実の囚人から強制的に臓器が摘出されていると米国や欧州議会、人権団体が長らく指摘している。このほど、日本の有志組織は、臓器強制摘出の加担を疑われている中国医師ら医療関係者のリストを、外務省アジア大洋州局中国・モンゴル第一課に提出した。
米国を拠点にする法輪功迫害追跡国際調査国際組織(WOIPFG)は10年以上継続して、中国本土31の省と直轄市にある800あまりの臓器移植病院に対して、強制性のある臓器摘出の有無について状況調査を行っている。
WOIPFGが公開した移植医師らの発言によれば、例えば移植希望者は、気功により健康的な身体を維持する法輪功学習者を選択して、医療費を上乗せして選べるような仕組みだったり、医師が「当日の移植も可能だ」と極短期の待機時間で移植可能だと豪語するなど、需要に応じた移植手術ができるような状況にあることがわかっている。
WOIPFGは調査の結果、非人道性の疑われる臓器移植に加担する医療関係者のリストを作成し、国際社会への認知を促している。WOIPFGはリストを米国政府に提出し、リストに掲載された人物に対して、人権侵害者へ制裁を科すマグニツキー法を適用し、ビザ発給停止や資産凍結を求めている。
8月12日、日本と台湾、韓国の有志組織「中国臓器移植濫用に関するアジア諮問委員会」日本代表・根本敬夫氏は、外務省中国モンゴル第一課に、WOIPFGの強制臓器摘出の加担者リストを提出した。同時に、リストにある人権侵害加担についての調査および、これが確認された場合、マグニツキー法同等の制裁を科すよう求める要望書も提出した。
根本氏は、「リストに記載された人物は、中国臓器狩りに関わっている人々だ。生きている無実の人から臓器を奪い、金銭のために他人に移植する、このような問題が放置されていてはいけない。外務省は適切な対応を取ってほしい」と大紀元の取材に答えた。
データの改ざん
中国では2015年に自発的な臓器提供システムを確立したばかり。衛生部(厚生労働省に相当)は、死刑囚の臓器を利用せず、ドナーシステムのなかでのみ移植臓器は使用されると主張している。いっぽう、海外の研究者たちは中国の移植件数にはドナー登録者数との不一致があるとして、中国の主張に異議を唱えている。
医学誌「BMCメディカル・エシック(Medical Ethics)」2019年11月に掲載された研究報告によると、中国の臓器提供データは不自然にも「ほぼ正確に数式どおり」存在していることになっており、当局がデータを改ざんしている可能性が高いと報告者たちは結論づけた。2020年2月に別の医学誌「 BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)」 に掲載された論文では、445件の中国の医学論文のうち440件が、臓器の提供者は献体に同意したのかどうかが不明だった。
WOIPFGによる最近の機密調査によると、ある軍医は、若い生存者から「高品質な」臓器を調達していたことを認めた。また、ドナー希望者に扮した調査員に対して、希望すれば「ドナー」を見ることができると話していた。
「動揺しないなら…」と、陝西省にある中国空軍医科大学(第四軍医大学)西京医院の腎臓移植外科医、李国偉氏は2019年1月に電話で語った。「(病院についたら)ベッドに案内します。確認してください…20歳代です」。
WOIPFGの調査員は別の機会の取材で、李医師に対して「あなたは法輪功(学習者)の臓器を使っていますが、それらが良質で病気のないものだと考えていますか?」と尋ねた。「はい、そういう言い方ができます」と李氏は答えた。
新型コロナウイルス患者に対する5日以内の両肺移植や、日本からの中国人患者に10日間で4度も心臓が提供されるなど、今もなお、中国の臓器移植手術では医学倫理上実現の難しい極短期の待機期間で移植手術が行われている。
「中国が独立した調査を認めないのであれば、国際的な臓器移植関係者は中国の移植システムから切り離すべきである」と医療関係者による倫理団体「強制臓器摘出に反対する医師の会(DAFOH)」代表のトルステン・トレイ医師は大紀元の取材に答えた。
(文・佐渡道世)
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