中国政府は3月18日、米国3大手紙の中国駐在米国人記者の記者証の失効を発表し、事実上の国外退去を下した。これは、米国政府が最近、国営新華社通信など5つのメディアを中国共産党の「宣伝組織」とみなし、米国内の記者数に上限制を取り入れることへの報復措置とみられる。
今回の決定で、米3大手紙ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポスト所属の少なくとも13人の記者のビザが10日以内に失効する。これらのメディアは、中国本土のみならず香港、マカオの取材活動もできなくなる。
同時に、中国政府は、米政府系ボイス・オブ・アメリカ(VOA)とタイム誌に、中国業務に関する詳細を中国当局に書面で提出することを要求している。
VOA代表のアマンダ・ベネット(Amanda Bennett)氏は、中国政府による外国メディアの干渉は違法とする声明を発表した。
「私たちは中国の視聴者に対して、信頼性の高いニュース情報源としての役割を果たしている」「週4000万人以上の中国市民がVOAを閲覧している。2019年後半に中国で中共ウイルス(新型コロナウイルスとも呼ぶ)が発生して以来、サイトのアクセスが33%増加し、仕事はさらに重要になっている」と声明に書かれている。
ニューヨーク・タイムズの編集長ディーン・バケット(Dean Baquet)氏は、ジャーナリストが中国で仕事を続ける必要性について言及した。「米国と中国の政府がこの論争を解決し、ジャーナリストが公共に情報を提供するという重要な仕事に戻れるよう求める。世界中の人々の健康と安全は、2つの最大経済国についての公平な報道にかかっている。現在は共通の感染症蔓延と戦っている」
中国外交部の耿爽報道官は定例記者会見で米国に対して、中国メディアに対する政治弾圧や無理な制限をやめるよう求めた。これは、トランプ政権が中国官製メディアを外国代理人に登録し、中国人記者の人数を制限したことを指すとみられる。
多くの海外メディアが所属する在中国の外国記者協会(FCCC)は同日、北京が取った措置について声明を発表した。中国側は 「米国3紙の記者たちに対する措置は私たちにも影響を与える。中国当局による報道関係者への制限はさらに強まる可能性がある」と書いている。
中国当局、外国記者のビザ問題を武器化
FCCCは、世界的な経済大国が、記者を「人質」扱いしており、この手法の勝者はいないと批判した。約40の国と地域から、約100のメディアが会員としてFCCCに所属する。北京の正式な団体承認は得られていないが、リークされた中国情報を報道することがある。
FCCCが今月初めに発表した報告書では、同会所属の会員ジャーナリストたちの80%以上が、何らかの干渉、嫌がらせ、暴力を経験した。
「中国は、経済的影響力の拡大につれ、中国が示したい世界的なイメージに合わない報道を抑制している。情報統制に国家権力の乱用を強めている」と報告した。
FCCCの統計によると、2013年以降、中国当局は9人の外国人記者を追放した。ビザ発給が拒否された記者もいた。2019年初め~2020年2月まで、少なくとも13人の中国特派員は有効期間6カ月、3カ月以下のビザしか取得できておらず、そのうち3人は1カ月のビザしか発行されなかった。外国駐在記者のビザは通常1年間有効のものが発行される。