動物園入園にも顔認証 中国の大学副教授が提訴「個人情報を強制的に収集」

2019/11/10
更新: 2019/11/10

中国浙江理工大学の副教授は、杭州市野生動物園の顔認証システム導入が消費者権益の侵害に当たるとして地裁に提訴した。顔認証技術をめぐって中国初の訴訟であるため注目が集まった。

地元メディア「銭江晩報」によれば、同大学法政学院の郭兵副教授は今年4月、1360元(約2万1千円)で動物園の年間パスポートを購入した。有効期間は1年間。入園の際に、パスポートの提示と指紋認証が必要だという。

10月17日、動物園から郭副教授に入園の際の指紋認証が廃止され、「今後、顔認証に切り替える」との連絡が届いた。

郭兵氏は、重要な個人情報である顔情報が、漏えいすれば悪用される可能性があり、消費者本人と財産の安全を脅かす恐れがあると主張した。同氏は、動物園が利用者の同意を得ずに、年間パスポートの管理システム変更を通して、強制的に利用者の生体認証情報を収集することは、中国の『消費者権益保護法』の関連規定に違反するとした。

「なぜ動物園が顔情報を収集しなければならないのだ。安全面に不安がある。情報が漏えいした場合、だれが責任を負うのだろうか」と郭氏が述べたという。

副教授は10月28日、杭州市富陽区人民法院(地裁)で提訴し、動物園側に年間パスポートの料金を払い戻すよう求めた。11月1日地裁が受理した。

浙江理工大学法政学院のウェブサイトによれば、郭兵副教授は浙江大学で法学博士号を取得した。現在、中国の全国大学人工知能(AI)およびビッグデータ技術革新連盟の理事や、浙江省法学会網絡(サイバー)法治研究会の理事なども務めている。

米国に亡命した中国の人権派弁護士の彭永峰氏は今月5日、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、「郭副教授の訴訟は、中国国民のプライバシー保護という意識啓発の面において大きな意味がある」との認識を示した。

中国当局は近年、国民への監視を強化し、膨大な量の監視カメラやビッグデータ分析技術を使って、国民の個人情報を収集してきた。

(翻訳編集・張哲)