香港で行われている大規模な抗議活動は、来年上映予定のディズニー映画「ムーラン」実写版にまで波及している。発端はムーランを演じる米国籍中国生まれの女優、劉亦菲(リウ・イーフェイ、31)が15日、ネット上で香港警察を支持すると投稿したことにある。香港警察が抗議活動を行った市民らに過剰な実力行使をしたと批判されているため、一部のネットユーザーは、リウが出演する「ムーラン」をボイコットするよう呼び掛けている。
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)16日付によると、ツイッター上では「#ボイコットムーラン(#BoycottMulan)」が人気検索ワードとなった。一部のユーザーは、米国籍を有するリウは「米国の自由を享受しながら、中国当局の全体主義的専制を支持している」と非難した。また「ムーラン」役を他の女優に代わってほしいとの声も上がった。
リウ・イーフェイのほか、香港出身の国際映画スターのジャッキー・チェン、レオン・カーフェイや中国の女優ヤン・ミー、リー・ビンビン(李冰冰)、俳優のホアン・シャオミン(黄暁明)などの有名芸能人も相次いで、香港政府と警察当局への支持を公表した。
米プリンストン大学客員研究員、中国学舎執行主席の陳奎徳氏はRFAに対して、「中国当局は知名度のある芸能人を利用して、世論を誘導する狙いがある」との見方を示した。
中国民主化活動家の胡佳氏は、中国で活動する国内外出身の芸能人に同情を示した。「香港問題は、中国当局にとってレッドラインになっている。スターたちも、当局が主導した政治闘争の被害者で、恐怖を感じているだろう。リウ・イーフェイが共産党に忠誠心を示さなければ、今後、国内での活動を封じ込めるに違いない」
「ムーラン」を製作した米ウォルト・ディズニー・ピクチャーズは、同映画へのボイコット運動についてコメントを発表していない。
米シンクタンク、ヘリテージ財団アジア研究センター長のウォルター・ローマン氏は、中国当局が政治的影響力を駆使して外国企業の経済活動に干渉していると、強い懸念を示した。
「香港問題についての立場を表明する前に、企業と俳優らは自身にどのような影響をもたらすかを考えなければならなかった」
香港のキャセイパシフィック航空は16日、ルパート・ホッグ最高経営責任者(CEO)が19日付で辞任すると発表した。キャセイは多くの職員が香港の大規模デモに参加したとして、中国当局が安全上の重大なリスクがあると警告していた。中国の圧力を受けての辞任となった。
リウ・イーフェイは中国湖北省武漢市で生まれ、10才の時、母親と共に米に移住した。2002年、外国籍学生として中国映画界の人材を育成する北京電影学院に入学した。それ以降、中国の映画・ドラマ界などで活躍している。
「ムーラン」は来年3月に北米で上映される予定。日本公開は未定。
(翻訳編集・張哲)