中国返還22周年を迎えた1日、香港では民主派団体が主催する恒例のデモ行進に約55万人の市民が参加した。返還後、最大規模となった。一方で、一部の抗議者は同日夜、犯罪容疑者の中国本土への移送を可能にする「逃亡犯条例」改正案の完全撤回や行政長官の辞任などを求めて、立法会(議会)の建物に突入し占拠した。抗議者らは立法会の壁などに、「逃亡犯条例改正案反対(反送中)」「真の普通選挙をせよ」などのスローガンを書いた。
デモ行進
現地時間1日午後3時ごろ、香港市民はビクトリア公園から香港島中心部に向かってデモ行進を始めた。市民らは「逃亡犯条例改正案に反対」「悪法を撤回せよ」「林鄭(行政長官)、辞任せよ」などのプラカードや横断幕を掲げて練り歩いた。
最高気温が33度近くになったこの日、多くの市民は子どもを連れて、炎天下のデモ行進に参加した。中に若い中学生や高校生の姿が目立った。
6歳の子どもを連れて参加した市民の劉さんは、6月9日と16日の抗議デモにも加わった。「子どもたちの将来のために参加した。一国両制度の維持、司法の独立、高度な自治を強く希望している。しかし、この逃亡犯条例改正案は香港司法制度の独立性を破壊している。これが衝突の拡大をもたらした核心的な問題だ」と話した。
中学1年生の陳さんも、6月の大規模な抗議デモに参加したという。「行政長官は条例改正案を撤回せず、審議を延期しただけだ。これはやはり、中国当局が背後で指示しているのだろう。中国当局は50年間、一国両制度を変えないと約束したのに、今の香港は完全に中国当局に蝕まれている」と批判した。
もう一人の中学生も、「条例改正案が完全に撤回されるまで、抵抗し続けていく」と述べた。「私は中国人だが、中国共産党には反対だ。共産党は人民の幸せのために戦うと言っているが、実際は資本主義を利用して私利私欲を図っている」
昨年、民陣らが主催した7月1日の抗議デモには5万人の市民が参加した。今年は11倍の55万人となった。時事評論家の程翔氏は、「市民が香港政府に完全に失望している」と述べた。
「追い詰められて先鋭化した」
香港政府は1日午前8時頃、香港の中国返還22周年を記念し、香港島中心部にある金紫荊広場で中国当局の旗と香港特別行政区の旗を掲揚する式典を開催した。一部の市民は同日未明から式典会場の外で、「逃亡犯条例」改正案をめぐって抗議活動を行った。香港警察当局は式典開始前の7時半ごろ、抗議者に催涙スプレーを噴射し、警棒で殴るなど強制排除に乗り出した。市民の中に負傷者が出た。
これに抗議して、一部の市民は立法会に移り、抗議を行った。
1日午後5時ごろ、抗議者は再び立法会の建物の前で抗議活動を続けた。一部にはガラスを割るなどの行為が見られたが、立法会の警備に当たる警察官らは制止しなかった。抗議者と立法会の庁舎内にいる警官隊は、夜9時まで対峙していた。しかし、この時、警官隊は突然立法会から離れ、政府本部ビルに移動した。警官がいない中で、抗議者らは立法会に突入した。
立法会を占拠した抗議者は1日夜、「香港人抗争宣言」との声明文を発表した。
声明では、抗議者らは、「われわれは一般の香港市民で、武装がなければ、暴力行為もなかった」とし、「身を持って暴政に対抗するつもりは全くなかったが、しかし、虚言を吐き、市民の訴えに耳を傾けない横柄な政府に対して、やむを得ず抗争しなければならなくなった」と強調した。
同宣言は、香港政府に対して、逃亡犯条例改正案の完全撤回、6月12日の抗議デモが「暴動だ」という行政長官の発言の撤回など5つの事項を求めた。
警察当局は現地時間2日午前0時(日本時間2日午前1時)頃、立法会を占拠した抗議者を強制排除した。その後、警官隊は主要幹線道路の龍和道と添美道などを占拠した抗議者らに向けて催涙弾を発射し鎮圧した。
民主派団体「民間人権陣線(民陣)」と民主派議員24人は共同声明を発表し、抗議者の立法会占拠について、「若者は、民意を無視し市民と対話しない政府に絶望したため、先鋭化した」と香港政府を批判した。
共同声明は、林鄭行政長官が市民と対話することと、市民に対して武力鎮圧をしないことを要求した。
一方、米英は香港情勢に強い関心を寄せている。
米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)2日付によると、トランプ米大統領はホワイトハウスで記者団に対して、香港市民による大規模な抗議デモについて、「悲しいことだ。このような抗議をあまり見たことがなかった。本当に悲しい」「彼らは民主主義を求めている」「しかし、一部の政府が民主主義を排除している」と述べた。
ペロシ米下院議長はツイッターで、香港市民の抗議活動を応援すると投稿した。
英国のジェレミー・ハント外相は、英国政府は香港とその「揺ぎない自由」を支持するとの声明を発表した。
香港市民や若者は抗議デモの後、幹線道路と立法会の建物の清掃を自発的に行った。
(記者・林怡、翻訳編集・張哲)