トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は6月29日に開かれた首脳会談で、5月初めから中断している両国の貿易交渉を再開することで合意した。海外の中国人学者らは、交渉再開には中国側が歩み寄ったとの見方を示し、今後、米中が合意するかについて「依然として不透明だ」とした。
米中両国が首脳会談後にそれぞれ発表した声明を見ると、交渉再開の決め手はおもに、「米政府がしばらく新たな関税制裁を発動しない」「米中貿易不均衡を埋め合わせるために、中国当局は米製品を大量に購入する」「一部の米国企業に対して、華為技術(ファーウェイ)との取引を容認する」という3つの事項があったと見て取れる。
香港城市大学政治学部の鄭宇碩・教授は、「トランプ大統領が習近平国家主席のメンツを立てるために、中国側の要請に応えて、新たな制裁関税を実施しないこととファーウェイとの取引の一部容認を示した。一方で、中国側は5月初めに合意した交渉内容を基に、今後の交渉を続けるという米側の要求に応じた可能性が高い」との見方を示した。
「米国は、これまでの合意内容を覆さないと繰り返し強調した。5月初めに、双方が構造改革の推進や米企業への技術の強制移転、国有企業への補助金の撤廃などで意見が一致したため、今後の交渉はこれらに基づいて進められる」と鄭教授は述べた。
中国時事評論家の石実氏は、米中通商協議の再開に同意した中国当局は依然として厳しい状況にあると指摘した。「2500億ドル相当の中国製品への制裁関税が維持されており、ファーウェイと他の中国ハイテク企業がまだ米の禁輸措置リストに入っている」ため、今後の情勢は中国当局にとって必ずしも楽観的ではないとした。
米政府は5月以降、今までの交渉内容をほごにした中国当局に対して、制裁関税の税率を引き上げ、ファーウェイとその子会社、他の半導体企業に禁輸措置の実施と次々に対抗策を講じ、譲歩を迫った。「合意の撤回をした中国当局は甚大な損失を被った」
また、中国人歴史学者の章天亮氏は、「中国当局は合意を覆して、米国に報復関税措置などを実行して徹底的に抵抗していくと示したのに、結局、無駄骨を折って5月初めの時点に戻り交渉再開を承諾した。これは、やはり米国の制裁措置が功を奏し、中国の国内景気の後退や失業者の増加が想像以上に深刻化していることを反映している」とコメントした。
米中国語メディア「縦覧中国」の陳奎徳・編集長は、トランプ大統領が示したファーウェイへの輸出容認について、「現時点ではまだ不明瞭だ」との見方を示した。トランプ大統領は29日、首脳会談後の記者会見で、国家安全保障上の重大な問題がない部品や機器をファーウェイに販売しても構わないとの考えを示した。陳編集長は、「トランプ大統領がその考えを実行しようとしても、議会の批准を受けなければならない」とした。
シューマー米上院院内総務(民主党)とルビオ上院議員(共和党)は29日、ファーウェイへの一部の取引容認は、中国との貿易不均衡を是正する米国の努力に打撃を与えると声明を発表し、トランプ大統領の考えに反対した。
一方で、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は6月30日、米メディアのFOXニュースの取材に対して、ファーウェイへの米製品の一部販売再開について、「恩赦」ではないと強調した。国家安全保障を巡る米議員らの懸念について、「大統領が共有しており、今後、議員らと会ってこの問題を議論する計画だ」と話した。委員長はまた、ファーウェイは禁輸措置リストに残っており、厳しい管理が適用されていると述べた。
クドロー氏によると、米中双方は5月初めの時点で、交渉の90%の内容について合意に至っていた。残り10%が最も難しい事項だったという。
今後、米中通商協議の行方について、鄭宇碩教授を含む中国人専門家らは「順調に進むかどうかは不透明だ」との認識を示した。
章天亮氏は、「米中双方が合意する可能性は低い。トランプ政権が3250億ドル相当の中国製品に対して第4弾の追加関税を発動する可能性の方が高い」とした。
陳奎徳編集長は、「中国当局は嘘をつくという本性を変えるはずがないから、米中が合意しても、履行しないだろう。だから、中国側の合意履行を検証することが大事だ」と話した。
トランプ大統領は29日の記者会見で、「少なくとも当面は中国に対する関税を引き上げない」と話し、中国側との合意を急いでいないとし、改めて交渉の長期化を示唆した。大統領はまた、今後の貿易交渉で良い結果を得られない場合、「いつでも関税を引き上げる用意がある」と述べた。
また、トランプ大統領は30日、主要20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)の閉幕後に訪れた韓国で、同国の経済界関係者と会談した。大統領は、現行の2500億ドル相当の中国製品への25%関税賦課について、中国側が合意するまで維持されると強調した。
(記者・駱亜/張頓、翻訳編集・張哲)
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