中国は最近、南シナ海で初となる深海坑井(こうせい)の建設を完了させたと発表した。深さ4660メートルから入手する天然ガスや原油は、広東省、香港などに供給するという。一方、南シナ海は6カ国が領海を主張する係争地域であり、このエネルギー井戸の建設は物議をかもしている。すでに、ベトナム船と中国海軍との間で、頻繁に対立が起きている。
中国最初の深海坑井
4月8日、中国最大の国営オフショア石油生産国・中国海洋石油集団有限公司(China National Offshore Oil Corporation、CNOOC)は、公式サイトで、南シナ海東部に位置する中国初の建深海掘削開発井戸の完成を発表した。井戸は、4月1日に完成したという。
坑井とは、原油やガスなどのエネルギーを安定して取り出すために必要な設備が取り付けられたエネルギーの採収井。
公式発表によると、北京がハイテク経済の中心地になることを期待して中国南部の広東省・香港・マカオのベイエリアに液化天然ガス(LNG)と原油を供給する。井戸の長さは4660メートル、垂直方向の深さは2529メートル、水深は680メートル。
アモイ大学の中国エネルギー経済研究センター所長の林伯強所長は、官製紙・環球時報のインタビューで、工業発展が見込めるベイエリアにさらなる安定したエネルギー供給を確保したとした。
この井戸は、CNOOCによって開発された沖合掘削プラットフォーム「HYSY981」によって掘削された。
一方、係争地域である南シナ海で建設されたこの井戸をめぐって、ベトナムと中国は対立している。
ロイター通信によると2014年5月、CNOOCが掘削器HYSY981を使って、ベトナム中央海岸沖の探査区画に試験的な掘削をした後、両国の間で衝突が発生した。ベトナムにおける大規模な抗議により、CNOOCは後にプラットフォームを撤去した。
中国の業界専門家は、さらなるエネルギー掘削に野心をほのめかした。中国のエネルギー産業ウェブサイトchina5e.comのチーフアナリスト・Han Xiaoping氏は4月13日、サウスチャイナ・モーニングポストの取材に答え、初の中国採掘プラットフォームによる坑井の設置を自負した。「これは米国、英国、その他の西側諸国で世界有数の海洋掘削会社が使用する掘削作業だ」「中国がこれらの国と差を縮めつつあることを示した」
中国エネルギー 外資の依存
世界のなかでもエネルギー消費の多い中国は、自国内で十分な石油とガスを生産できず、ロシア、サウジアラビア、アンゴラ、イラク、イランなど原油国からエネルギーを輸入している。
1月14日に公表された中国公式データによると、中国は2018年に4億6919万トンの原油を輸入した。これは、1兆5880億元に相当する。
いっぽう、米国エネルギー情報局の統計によると、2018年中国の石油生産量は1日当たり約480万バレルで、世界第5位だった。
中国は近年、オーストラリア、カタール、マレーシアから液化天然ガス(LNG)を輸入し、船舶や陸上で輸送している。
米国がLNG輸出を増やすことは、現在進行中の米中貿易交渉における交渉ポイントになっている。米国は世界最大のLNGと原油生産国だ。
中国石油天然気総公司の統計によると、2018年の中国の天然ガス輸入量は1254億立方メートルで、うち59%がLNG。LNGの安定供給を確保するため、中国は海外でエネルギー開発の機会を狙っている。
(文 ニコール・ハオ/翻訳編集・佐渡道世)