中国国営中央テレビ(CCTV)系列の中国環球電視網(中国グローバルテレビジョンネットワーク、CGTN)アメリカ支社の社長ら上級幹部十数人はこのほど、人事異動で帰国したことが分かった。CGTNは2月、米の外国代理人登録法(FARA)に基づき米司法省に登録したばかり。今後、CGTNの在米業務が制限される恐れがあり、中国共産党政権が海外で推し進めるプロバガンダ宣伝は出鼻をくじかれる形となった。今回の人事異動はこの局面の反映との見方が出ている。米紙ニューヨーク・タイムズ中国語電子版が11日報道した。
運営資金がすべてCCTVから
FARAは、外国政府のために宣伝活動をする機関に対して、登録を義務付けている。登録により、米司法省は、CGTNアメリカ支社に対して年間予算や支出などの情報開示を求めることができる。
ニューヨーク・タイムズの報道によると、米司法省は過去1年間、CGTNアメリカ支社に対して、「同社と中国当局との関係を詳細に説明するよう」要求している。
米司法部が公開したCGTNアメリカ支社の登録資料によると、同社の麻社長は、「同社はいかなる政府の指示も受けていない」「編集の独立性を有し、運営は他の報道機関と同じだ」「政治活動に従事していない」とした。
CGTNアメリカ支社は、司法省に登録した中国の22の「外国代理人」機関のなかで、初めて資金の使途を公開した機関だ。登録資料によれば、昨年12月から今年1月まで、CGTVアメリカ支社のすべての資金の出どころは国営中央テレビからだ。この2カ月の支出総額は799万3000ドル(約8億9039万円)。このうちの約72%にあたる574万3000万ドル(約6億3975万円)は、雇用関連支出だという。
また、麻社長は登録資料において、CGTNは「米司法当局が主張する外国政府、または外国政党の特徴に一致しない」と複数回強調した。
ニューヨーク・タイムズによれば、現在米国内の3000万世帯がCGTNアメリカ支社の視聴者になっている。同紙は「CGTNアメリカ支社は、中国当局によるグローバル・ソフトパワー戦略の一部だ」と指摘した。
CGTNはホワイトハウスの近くで事務所を構えており、180人の記者を雇用している。その多くはアメリカ人だという。
CGTNは米向けの番組で、新疆ウイグル人を弾圧するために当局が設置した「再教育キャンプ」について「職業訓練施設だ。(収容された)ウイグル人に感謝されている」と宣伝した。
さらに、台湾国旗の放送や法輪功への言及は禁止されている。人権団体フリーダム・ハウスのサラ・クック東アジア問題専門家は、CGTNは「中国政府のために存在しており、そのため多額の運営資金を得ている」と指摘した。
外国代理人登録で浸透工作に打撃
一方、米ニューヨーク大学の訪問学者で中国人権弁護士の滕彪氏も大紀元に対して、CGTNは中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と同様、中国当局と緊密な関係にあると主張した。「米司法省が今後中国当局とCGTNの関係を裏付ける証拠を入手すれば、CGTNは厳しい処罰に直面するだろう」
米議会の超党派諮問機関、「米中経済安全保障再考委員会」は2017年11月15日、米議会に提出した調査報告書で、中国政府系メディアの米国支局の外国代理人登録を義務付けるよう求めた。同委員会は、中国国営メディアが「米国内で影響力を拡大させており、中国当局のために諜報活動も行っている」と警告した。
米司法省は昨年9月、中国国営新華社通信とCGTNに対して、外国代理人の登録を命じた。しかし、新華社通信は現在FARAの登録はしていない。
中国問題専門家の薛馳氏は、「トランプ政権の対中政策によって中国当局の海外浸透工作が大打撃を受けた」と大紀元に述べた。
また、薛氏は「中国当局は今後対策を練り直して、米社会で新たなすきまを探すだろう」と警告した。
米FARA法に基づき、司法省に登録した中国政府系メディアは、「中国日報」「人民日報海外版」と上海市政府傘下の「新民晩報」である。
(翻訳編集・張哲)