中国当局は3月5日、全国人民代表大会(全人代)の開幕に合わせて、2019年の中央政府と地方政府の予算報告を発表した。その中で、2019年中国の国防費は前年比7.5%増の約1兆1900億元(約19兆7540億円)で、公共安全支出(社会秩序安定維持費用)は同5.6%増の1797億8000万元(約2兆9844億円)、計上されることが明らかになった。専門家は、中国の国防費伸び率が国内総生産(GDP)成長率より高いほか、公共安全支出は実際には、国防費を上回る可能性があると指摘した。
中国の李克強・首相は5日、全人代で政府活動報告をした。首相の演説には、今年の国防費および公共安全支出の予算案についての直接的な言及はなかった。
2019年中央政府の予算報告によると、今年の国防予算伸び率は2018年の8.1%増と比べてやや鈍化した。
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)5日付によれば、海外メディアは4日の記者会見で、全人代の張業遂・報道官に対して、中国の軍事予算の拡大が周辺国に脅威を与えるのではないかと質問した。しかし、張報道官は、中国国防費の伸び率は2桁から1桁に下がり、また国防費は中国GDPの1.3%しか占めておらず、主要国の「2%」より低いため、「中国の国防費は限られている」と述べた。
中国国内軍事専門家の立風氏はRFAの取材に対して、今年の軍事費用伸び率は依然として、GDP成長率より上回っている状況は変わっていないと指摘した。
立氏は、中国当局が過去に巨額な資金を武器や軍備の購入に投じたため、「消化するのに時間かかる」とした。また、近年軍改革のため、人員が削減されたほか、一部の軍事支出も削減された。また、国内経済状況の悪化で、軍事費用の伸び率の鈍化は予測されていた。
「経済失速のなか、中国当局が依然として軍事力拡大を重視していることを反映している。ほかの予算案は、景気悪化が原因で大幅に削減された。しかし、軍事費予算は昨年より減少したものの、マイナス成長になっていない」
立風氏は、中国の国防費伸び率が下降周期に入る可能性は低いとみた。
いっぽう、香港浸会大学の呂秉権・講師は、中国国民を監視し、抗議デモへの鎮圧等に用いられる公共安全支出規模が実際には国防費を上回るとの見方を示した。
「中国当局は、さまざまな名目やでたらめな統計手法を使って、表面上、公共安全支出の規模を縮小している」
呂氏によれば、中国当局は2014年以降、地方政府の公共安全支出の公表を取りやめた。中央政府が公表した数値は、全国の公共安全費用の一部に過ぎない。
呂氏はこれまで、中央政府と地方政府の予算報告と、国営新華社通信が公表する「国家帳本(国の帳簿)」を合わせて研究してきた。この結果、中国財政部(財務省)が発表する「中国財政年鑑」で示された全国公共安全費用が、実際の全国公共安全費用に最も近いという。
同氏の試算では、2019年中国の公共安全予算は、国防予算を上回り、1兆3000億元(約21兆5800億円)規模に達する。
「今年は、中国共産党が政権奪取70周年、六四天安門事件30周年、法輪功弾圧20周年などの節目の年だ。国内景気後退に伴い、中国当局がますます国内情勢を不安視していることを浮き彫りにした」
中国の李克強・首相は5日、全人代の政府活動報告で、今年の実質GDP成長目標を「6~6.5%」に設定すると述べた。
(翻訳編集・張哲)