中国当局は、今年の国内総生産(GDP)成長率目標を、昨年の6.5%から「6~6.5%」に引き下げる検討をしている。専門家は、中国経済失速が鮮明になった今、各レベルの地方政府は目標達成のために粉飾する可能性が高いと指摘した。
ロイター通信は11日、中国当局情報筋の話として、米中貿易戦争の影響と国内需要の低迷などを背景に、中国当局は2019年GDP成長率目標を「6~6.5%」に設定する見通しだと報じた。中国当局は3月開催予定の「両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)」で同目標を発表するとみられる。
中国国内金融アナリストの任中道氏は、経済成長の目標値を設定しているのは全世界を見ても中国当局だけだと批判した。「中国当局による経済活動への強い干渉を反映している。中央と地方政府は、この目標を達成するために、粉飾や虚偽の報告をするだろう」
昨年9月、中国南部広東省広州市と周辺地域の企業を視察した学者によると、現地の経済情勢は悪化し、民営企業はこれまでにない経営難に直面しているという。
中国金融智庫の鞏勝利・研究員は「広東省、海南省、江蘇省、浙江省と山東省のGDPと個人消費が縮小している。当局はそれを発表する勇気はないだろう」と述べた。
中国招商銀行の丁安華・チーフエコノミストは昨年の研究報告書で、年間主要業務収入が2000万元(約3億2000万円)以上の工業部門企業の2018年1~7月までの総収入は前年同期比13.36%減で、純利益は同8.1%減となったとした。
しかし、中国国家統計局が発表した2018年1~7月工業部門企業の総収入は同9.9%増で、純利益が17.1%増だった。
経済学者の向松祚氏によると、国家統計局は倒産した工業部門企業を統計対象から外したため、工業部門企業の総収入と純利益の数値が「大幅に増加した」との現象が現れた。倒産した工業部門企業の大半は民営企業だ。
いっぽう、鞏勝利氏は、米中通商協議で中国側が、米の要求に応じなければ、中国経済情勢は今後、さらに悪化するとの見方を示した。
「トランプ米政権が今後、対中関税制裁を再開すれば、2019年は中国経済にとって最悪の年になるだろう。中国経済を牽引してきた投資、個人消費と輸出がどれも不調だ」
中国当局は、経済減速が加速するリスクを抑えるため、市場に流動性の供給を強化している。昨年、当局は4回の預金準備率引き下げを実施した。しかし、軟調な内需、悲観的心理の拡大による企業の生産活動縮小が原因で、巨額の資金は実体経済ではなく、不動産と株式市場などに流れた。
1月4日、中国人民銀行(中央銀行)は預金準備率を1%引き下げると発表した。今回の引き下げで約1兆5000億元(約24兆円)の資金が市場に供給されるとみられる。
鞏勝利氏は、「預金準備率を1回で、一気に1%を引き下げるとは、極めて異例だ。中国国内で、流動性がひっ迫していることを反映している」と話した。
また、鞏氏は「紙幣印刷による効果は一時的なものだ」と強調した。
(翻訳編集・張哲)
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