米フーヴァー研究所の最新報告、「大紀元が真の独立した中国語メディア」(下)

2018/12/27
更新: 2018/12/27

アメリカの公共政策シンクタンク・フーヴァー研究所(Hoover Institution)は11月29日に発表した報告書で、中国共産党がアメリカの世論を全面的に操作していることに警鐘を鳴らした。「中国の影響と米国の利益:建設的な警戒の促進」(Chinese Influence & American Interests: Promoting Constructive Vigilance)と題するこの報告書は32人の著名な中国問題学者によって共同執筆された。

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中国当局による記者らへの嫌がらせ

フーヴァー研究所の報告書は、中国当局は中国共産党に批判的な記者を入国禁止にするほか、中国国内にいる記者の家族の安全を脅かしている、と非難した。

報告書によれば、VOA中国語版の記者は「中国国家安全当局の工作員と面会したことがある。記者らは、中国報道に関して立場を変える必要があると言われた」と証言した。記者らは、中国国内にいる家族の安全のために、「米放送監理委員会(BBG)に報告しなかった」

VOAのほかに、米ラジオ・フリー・アジア中国人記者、特に中国新疆出身のウイグル人記者も、中国当局からどう喝を受けていた。

中新社を通じて海外中国語メディアを支配

中新社(中国新聞社)は、中国共産党政権が海外中国語メディアを支配するうえで、最も重要な役割を担っている。海外中国語メディアへの浸透を強化するため、中新社は海外センターを設立し、海外中国語メディアにニュース、社説などを提供している。同報告書は、海外中国語メディアが中新社の報道を採用すれば、完全に中国当局の影響下に収められると警告した。

中新社の郭招金・社長は2007年、米国の中国語出版物を管理できれば、海外華僑コミュニティにおける中国当局の影響力が増すだけではなく、米政界での発言権も強まる、と述べた。

中国共産党は、海外中国語メディアに対して長い間、統一戦線工作を行ってきた。広東省華僑弁公室の呉鋭成・主任は2010年、同省「僑網」サイトで発表した評論記事で、海外の中国語メディアと中国語学校と中国当局が支援する華僑コミュニティは、海外統一戦線工作の「三種の神器」だと主張した。

中新社が主催する「世界中国語メディアフォーラム」はその対外統一戦線工作の一環だ。

フーヴァー研究所は、このフォーラムを通じて、中国当局が海外中国語メディアに党への服従を説得しようとしている、と批判した。2001年の第1回「世界中国語メディアフォーラム」において、中新社の郭社長は、フォーラムの開催目的について、海外中国語メディアが、台湾や西側諸国のライバル社よりも、中新社の報道を多く採用するよう促すためだと述べた。

中国当局は海外の中国語メディア関係者を中国に招いている。「僑報」の游江会長が2015年に執筆した記事で、「国務院華僑弁公室は1年おきに、中新社などが、海外中国語メディアを対象にした研修を開催している。海外中国語メディアの経営関係者や編集幹部、記者などを中国に招へいする」と明かした。

游氏自身は、2015年の「海外中国語メディアのハイレベル研究クラス」に参加した。この年の研修で、海外中国語メディア関係者は、中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」に関係する各省での現地取材を許された。中国当局は、「一帯一路」に対する海外中国語メディアの支持と、海外中国語メディアを通じて華僑コミュニティの支持を得ようとした。

法輪功学習者のメディアは真の独立したメディア

報告書によると、アメリカにおける真に独立した中国語メディアは、法輪功学習者が創設したいくつかのメディアと「看中国」という「発行部数が少ない新聞紙に限られている」

大紀元時報は、2000年米国にいる法輪功学習者によって創立された。創立以来、中国当局によるサイバー攻撃と誹謗中傷を受けてきた。

2018年までに、中国当局に拘束・投獄された大紀元時報の現地スタッフは10人いる。なかの一人は、当局に「国家転覆罪」で12年間の禁錮刑を言い渡された後、2017年に獄中で亡くなった。

海外にいる大紀元の記者や編集者、投稿者も中国当局から脅迫を受けている。大紀元のコメンテーター・夏小強氏によると、中国国内にいる家族は2015年、夏氏の大紀元時報への記事投稿を即時に中止するよう要求された。また、夏氏が海外にいるにもかかわらず、当局は「安全とは言えない」と脅かした。

かつての独立系中国語メディアは、なぜ次々と中国共産党に丸め込まれたのか。中国問題専門家の何清漣氏は2012年に完成した報告書において、中国共産党政権と海外の中国語メディアは利害関係が一致していると指摘した。「中国共産党政権は統一戦線の目標を海外の華人に定め、積極的に資金を投下した。また中国語メディアは売り上げが伸び悩んでいる。このため、中国当局と海外メディアとの間で、業務提携が増えた」

何清漣氏の報告書は2018年に発表された。「報告書をまとめた目的は、人々の警戒感を高めることにある。これらのメディアは、国際社会での発言権の獲得と、中国人への洗脳工作を目的としている」

フーヴァー研究所、米政府の対応を要請

フーヴァー研究所の報告書は、中国当局の影響下にあり、中国当局のために宣伝活動を行う中国語メディアについて、米政府の監視強化を求めた。米政府は、中国語メディアに所有者の開示を求め、外国代理人登録法に基づき登録を義務付けることができる。

報告書はまた、真の独立系中国語メディアを存続させるには、米政府が資金支援を行うべきだと主張した。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、フーヴァー研究所の報告書の作成に参加した32人の中国問題学者の多くは、中国に深い愛情を持ち、中国当局が自由化改革を推進すると期待していた。WSJは、中国に好意的だった専門家も共産党の浸透工作を暴露したことは、米中関係に対する米国内の論調が大きく変わったと意味する、と分析した。

(翻訳編集・文亮/張哲)