APECで激しく衝突する米中 中国の策略を分析

2018/11/20
更新: 2018/11/20

世界各国に注目されている米中貿易戦争。18日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でも米中両国は通商問題に関して、真っ向から対立した。その影響で首脳宣言の採択は断念された。首脳宣言の見送りは、1993年APEC首脳会議の開始以降初めてで、異例中の異例と言える。

APECの会議でペンス米副大統領は再び中国の不公平な貿易慣行を批判した。いっぽう、習近平主席は、中国は「発展途上国」と強調し、米の批判を交わした。11月末に米中首脳会談が予定されているが、果たして成果をあげることができるのだろうか。

中国の詭弁(きべん)

APEC首脳会議に出席したペンス米副大統領は17日、APEC・CEO(最高経営責任者)サミットで演説を行い、中国側の不公平な貿易慣行と、市場が閉鎖的であることを批判した。

副大統領は、中国が輸入割当制、国有企業への補助金支給、強制技術移転、知的財産権侵害など、「非常に高い貿易障壁」を設けているとした。副大統領は「中国がその行いを変えるまで米国は方針を変えない」と第4弾になる2670億ドル(約30兆1100億円)相当の中国製品に追加関税を課すことを示唆した。

いっぽう、中国の習近平国家主席は同日行った演説で、中国はまだ「発展途上国」だと示唆し「『特別待遇および差別(関税)待遇』は世界貿易機関(WTO)の重要な礎である。この原則を否定してはいけない」と述べた。

周知のように、中国は世界第2の経済体だ。米中貿易摩擦が始まる前、中国政府系メディアは各評論記事で「2020年に中国の経済規模は米国を凌ぐ」と国力を持ち上げ、強気に米側の貿易制裁に対して対抗姿勢を示した。

差別関税とは、国際貿易における先進国が途上国の経済発展を促す目的で、途上国からの輸入品に対して比較的低い税率の特恵関税を賦課することを指す。中国指導者の発言では、世界第2経済体の当局は依然として低い関税で製品を輸出し、先進各国やWTO加盟国の国益を損おうとする意図が見てとれる。これに米国を始めるとする各国政府が、黙認することはないだろう。

また、APEC首脳会議で中国当局は、知的財産権侵害についての米側の批判に対して、再び反論した。

習主席は「イノベーションにとって、不利な体制的・機制的障害をすべて取り除き、イノベーションの潜在能力と市場の圧力を充分に啓発していくべきだ」「すべての国は自らの努力と国際協力を通じて、科学技術のイノベーションから利益を得る権利がある。科学技術のイノベーション成果を独り占めしたり、少数の人だけが利益を得るための道具にしてはいけない」とした。

これは、明かに中国側の言い訳で、詭弁(きべん)である。このロジックに従うと、莫大(ばくだい)な時間・資源・人力を投じて、技術革新を行う国はもはや現れないだろう。

当局の指導者の発言を見れば、中国共産党政権が国際社会のスタンダードや自由市場経済と相容れないのが分かる。同時に、中国共産党体制こそが「イノベーションにとって、不利な体制的・機制的障害」であることを示した。これが、中国企業が長年、欧米各国の企業と比べて、技術力が向上できない理由でもある。

中国の策略

中国当局は、米中貿易戦に応じる策略が少なくとも2つある。

中国側はAPEC開催前、通商交渉の再開に意欲を見せたうえ、142項目の改善案を米側に提出し、歩み寄る姿勢を見せている。

しかし、今回中国首脳の発言内容に米中の相容れない主張、価値観の違いが随所に現れている。さらに、中国側の言葉には米国を念頭に置いた批判が多く、米と意地の張り合いも感じられる。

一見、矛盾しているように見えるが、中国側の狙いは、今までと同様に、国際貿易において「途上国」の振りをし、WTOなど多国間貿易体制の抜け穴を利用し、最大の利益を獲得していくことである。これを実現する一つ目の策略は、「時間稼ぎ」だ。

当局は、双方の追加関税措置という「関税合戦」を「交渉戦」に導き、「和解のために協議する」との姿勢を示すことで、米の一時的な関税措置の中止、または新たな関税措置の不発動を取り付けようとする。そして、米中通商交渉を再開した後、中国側は米国との法律・規制をめぐる協議を繰り返させ、2020年まで時間を稼ぎたかったのだ。中国当局は、トランプ大統領の20年の大統領選での、落選を願っているだろう。

二つ目の策略は、多国間貿易で米国の発言権を弱めることだ。

APECで、中国側はまた「経済グローバル化」「グローバル・ガバナンス」「多国間貿易体制」に言及した。表面的に、自由経済を唱えるように見えるが、実際に多国間協議で、国際社会において米国を孤立化させることを最大の目的にしている。これによって、米国は一対一で中国に対して「公正・互恵の貿易関係」「貿易ルール順守」を要求する圧力を弱めることができる。

多国間貿易体制の下では、中国側が今まで国際ルールに違反してきたことは周知のことだ。同時に「ばら撒き外交」「賄賂外交」などの手段を使って、他国に対して米国に対抗するよう圧力をかける。米国を批判し中国当局の肩を持つ国が増えれば、情勢は中国当局に有利になるからだ。米の対中圧力が弱まり、中国当局が国際社会における発言権を強化し、国際貿易ルールをコントロールできるからだ。米政府の動きを封じ込めることさえできれば「反保護主義」の看板を掲げる中国当局は引き続き、多国間貿易体制の最大の恩恵者になる。

いっぽう、各メディアの報道によると、中国代表団の官僚4人がAPEC首脳会議の閉幕直前に、開催国パプアニューギニアのリムピング・パト外相の執務室に強引に入ろうとした。中国当局の関係者が、首脳宣言の一部の文言に不満を抱き、それを変更させるようパト外相に面会を要求したが、認められなかったため、外相の執務室に押し入ろうとした。

これは、あらためて中国当局の一貫した横柄・無礼の態度を浮き彫りにした。この騒動はまた「コネを利用して、他国に干渉する」「裏で操る」「言行不一致」という中国共産党の特徴を完全に再現したといえる。

G20で米中首脳会談

APEC首脳会議で、ペンス米副大統領は講演で、中国に対して米の強硬立場を再び示した。今月末アルゼンチンで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて米中首脳会談が行われる。以上の2つの策略を企てる中国当局が米国との間で、何かしらある一定の合意をする可能性が高いと推測する。しかし、実質的な問題解決には至らないとみる。真の市場開放は、中国共産党体制の崩壊を意味するからだ。米中貿易戦がいつ終わるのかはまだ未知数だ。

(大紀元コメンテーター・唐浩、翻訳編集・張哲)