米司法省、中国と台湾企業を起訴 半導体大手マイクロンの技術を盗用

2018/11/02
更新: 2018/11/02

米トランプ政権の中国企業による悪意ある技術盗用に対する強固な姿勢は、ますます明確になっている。米司法省は米マイクロン半導体技術を盗用したとして、福建省と台湾の企業を刑事と民事の両方で起訴している。

カリフォルニア州サンノゼの連邦裁判所によると、連邦大陪審は福建省の晋華集成電路(以下:福建晋華、JHICC)と台湾の半導体メーカ・聯華電子(UMC)は、マイクロンの商業機密を盗み出したとして起訴した。刑事裁判の訴状は9月27日に、民事裁判は11月1日にそれぞれ裁判所へ提出された。

福建晋華とUMCは経済スパイ、商業機密窃盗罪、共謀窃盗罪の3つの罪で起訴されている。

米商務省は10月29日に安全保障上の脅威になるとして、福建晋華への部品輸出を制限すると発表した。共謀したUMCと台湾人3人も起訴された。訴状によると、3人は台湾拠点の米マイクロン社の子会社であるマイクロン・メモリ台湾(MMT)の元幹部。共謀して半導体技術を盗み出し、中国福建省で福建晋華を設立した。

ジェフ・セッションズ米国司法長官によると、マイクロン社の資産総額は1000億ドル(約11兆円)で、DRAM(記憶保持を随時に書き込みと読み出しするメモリ)技術の世界シェアは20~25%になる。米大手総合情報サービス会社・ブルームバーグによると、マイクロンの2017年度売上高の5割強を中国市場が占める。

マイクロンは、米国ではDRAMを製造する唯一の企業。DRAM設計では世界的なリーディングカンパニー。開発、製造に関する詳細な機密情報を含む多くの知的財産権を保有する。

セッションズ長官は、中国と台湾の両社への技術盗用に対する起訴について「違法で間違った行為であり国家安全保障への脅威だ。やめさせなければならない」と語った。また類似案件も起訴する構えを示した。ロイター通信によると9月以降、米司法省は技術盗用関連で中国企業に対して4件の裁判を起こしている。

共産党の策である電子技術の技術移転

訴状は、中国国内にはDRAM技術がないにもかかわらず、中国共産党政権や国務院がDRAMのようなマイクロ電子技術を「国家的な経済優先事項」に位置付けていると指摘。この国策に従って、中国企業は台湾とアメリカの技術系企業を買収したと書いた。

起訴された3人のうちの一人・陳正坤氏は、UMCと福建晋華のパイプ役を担っていた。両社の協議を設定し、財政支援やDRAM技術を共有した。陳正坤氏は2017年2月に福建晋華のCEO(最高経営責任者)に就任し、DEAM生産施設の建造を進めた。

陳氏は台湾のマイクロン子会社MMTから2人の役員を引き抜いて、DRAM関連事業を拡大した。この役員はMMT離職前に技術を盗み出し、UMCへ移した。

福建晋華とUMCは2016年9月から2017年3月までに中国で5件の特許を申請しているが、マイクロン社の特許との類似点が非常に多い。

中国国内の司法当局は、こうした技術スパイにより拡大した中国技術系企業を擁護する動きがある。2018年1月、福建晋華とUMCは福建省の裁判所で、上海西安のマイクロン社関連企業を「権利侵害」で起訴した。同年7月、福州中級人民法院はマイクロン社に対して、「UMCの技術であるDRAMとNAND(高速大容量メモリ)」関連の26製品の販売を差し止める仮命令を下した。

一方、2017年、マイクロン社は商業機密を盗用されたとして福建晋華とUMCを相手取り訴訟を起こした。2018年の販売差し止め令はマイクロン社に対する報復判決とみられる。

(編集・佐渡道世)