11月初旬の中間選挙が差し迫る米国社会はいま、爆発物騒動に揺れている。小包に入った手製爆弾には不自然な点が多く、専門家は自作自演の可能性を指摘している。
10月後半の13日間で、10件もの爆発物騒動が発生した。対象はオバマ前大統領、ヒラリー前国務長官、ジョー・バイデン前副大統領、ニューヨーク州知事ら米民主党所属の大物政治家。富豪ジョージ・ソロス氏、著名俳優ロバート・デ・ニーロ氏、大手テレビ局CNNなどにも爆発物が送られたという。
送付先はいずれも、トランプ大統領に公然と批判を繰り返す人物や報道機関だった。犯行は、中間選挙前に彼らを脅迫することを目的にみえる。FBI捜査官は、実行犯は同型の鉄パイプに火薬を詰めた手製爆弾を送付したとみられると述べた。
選挙前、国民の政治的意識が高まる米国では、こうした「被害者」扱いの民主党への関心や同情が集まる。いっぽうで、2大政党制をとる米国で反対勢力である共和党は自然と背を向けられる。
この「被害者への同情」は、台湾で顕著にみられるものだ。中国共産党が台湾保守系政党を攻撃すればするほど、この政党への同情心や支援したいとの気持ちが高まり、得票率が高くなった。
爆弾騒動は、この「同情」で得票数を得ようとする、民主党支持勢力による自作自演である可能性もある。
米海軍で爆弾処理班に在籍していたというマッカーサー・グループ会長トーマス・ザウアー氏はSNSで、爆弾小包だという映像には疑わしい点がいくつかあると指摘する。1.適切に製造されたパイプ式爆弾の両端にワイヤーが露出することはない 2.パイプ爆弾の時限装置は通常、パイプの中に納めるもので、露出しない。
ザウアー氏はこれらの事から、いかにも爆弾であると周囲の人に認知させ、威嚇を狙った意図的な露出かもしれないと指摘する。
CNNは、送付された小包から取り出した不審物そのものの写真を公開した。撮影角度や撮影場所から、警察関係者や爆弾処理班が撮った写真ではなく、危機管理姿勢を示さない受け取った側が撮影したものと考えられる。
公開されたパイプ爆弾と見られる不審物には、過激派組織ISISのロゴを模したようなシールが貼り付けてある。
通常、このような危険物が小包から見えたら、その場を直ちに離れ家族や社員を退避させ警察に通報する。「爆弾」のサイズを比較するために、近くにウエットティッシュのケースが映るように写真を撮ったりしないだろう。
10件もの爆弾が送られたが一件も爆発した事例はなく、幸い負傷者はいない。米国内報道によると、警察当局はすべての不審物を回収し、調査するという。
犯人は逮捕されておらず、単なる愉快犯の可能性もある。しかしCNNは、不審物送付騒動の第一報から「爆弾を送り付けられた相手は、いずれも右派の批判の的になっている人物や報道機関ばかり。その多くは、トランプ大統領自身も矛先を向けている人物」と報じた。
爆弾が「ニセモノ」であり、実際の爆弾テロ犯人が民主党員や党支持者に傷を負わせていないのならば、中間選挙前の騒動で有権者に背を向かれ不利になるのは、トランプ大統領政権と共和党だ。
トランプ大統領は24日、米政府は不審物騒動に関する捜査に全力を尽くすと表明。FBIや司法省、国土安全保障省などからも説明を受けたことを明らかにした。マイク・ペンス副大統領は「この国に卑劣な行為の居場所はない」と強く批判し、大統領もこの意見に「全面的に同意する!」とSNSで返答した。
(文・唐浩/翻訳編集・佐渡道世)