地球上で最も高い山エベレストがそびえるヒマラヤ山脈。その豊かな自然生態系が今や、人間の活動によって壊滅的な影響を受けている。インド専門家はこのほど、「中国製造による世界環境への破壊」と題した文章で、中国政府による過度な開発が最も破壊力が大きいと指摘した。
ニューデリーにある独立系シンクタンク、政策研究センターのブラハ・チェラニー教授が23日、寄稿専門メディアの「プロジェクト シンジケート」に上げた文で「ヒマラヤ地域をめぐる環境破壊問題には、ほかの周辺国も一役買っているが、いずれも中国ほどの破壊力には及ばない」と述べた。
ミャンマーから中央アジアのヒンドゥークシュ山脈へ続くヒマラヤ山脈は、毎年の夏季モンスーンを生み出し、アジア・太平洋域の水循環や気候変動パターンを動かす中心的な役割を果たしている。
しかし、氷河の後退や気候の不安定化、生物多様性の喪失が急激に進むにつれ、揚子江やインダス川、メコン川、サルウィン川、ガンジス川などヒマラヤ山脈の氷河を水源とする5つの川が、世界で最も危機に瀕(ひん)している10の川に名を連ねる。
中国当局は民主主義のインドと違って、地元住民や環境NGO(非政府組織)らの反対に束縛されることはなく、大規模ダム建設や天然資源の搾取まで、野放図な国家開発プロジェクトが暴走を続けている。その脅威はアジア地域の生態系を圧迫するのみならず、世界に広がりつつある。
世界で最も多くダムを有する中国では、1950年以来、堤高15メートル以上のダムは約2万2000カ所を建設した。川の5分の1の水が人工の貯水池に貯蔵され、水量減少と流砂サイクルの寸断、河川生態系への破壊を引起こしている。それにより、350の大型湖が枯渇した。
中国は今、国内の川から国境を流れる河川に目を向けている。こうした中国の自然改造プロジェクトが、すでにヒマラヤの氷河のほぼ4分の3にあたる4万6000カ所を覆う「世界の屋根」と言われるチベット高原に集中している。
ダム建設のみならず、中国当局はチベット高原の北部と北西部で干ばつ対策として人工降雨を実施しようとしている。軍部の気象改造計画の試みである。チェラニー教授は文章の中で、このような活動はヒマラヤ山脈の湿気を吸い取る恐れがあり、アジアの気候変動に潜在的な影響を与えると懸念を示した。
一方、中国当局がチベット高原で大規模な鉱山開発を推進し、地元住民の生存環境を破壊するだけでなく、アジアの水源を汚染し、計り知れない被害をもたらす恐れがあると指摘する。
科学者は近年、ヒマラヤ山脈では森林減少や遺伝的変異の高さ、生物種の絶滅などの被害を受けていると警鐘を鳴らした。チベット高原の気温が世界平均の3倍の速度で上昇し、氷河の消失が加速している。その影響はアジアを超えて世界へ拡大している。
チェラニー教授は文章の最後に、同地域のさらなる環境悪化を防ぐため、ヒマラヤ周辺の国々、中国およびメコン河流域にある南アジア諸国と連携・協力するよう呼びかけた。世界環境への最も破壊力が高い中国製造の開発活動をやめさせるには、国際社会の圧力が不可欠だとの考えを示した。
(翻訳編集・王君宜)
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