米国と中国は6日、互いに340億ドル相当の輸入品に対して追加関税を上乗せする措置を発動した。中国オンショア市場では、対ドルでの人民元相場は取引が開始してから下落したが、午後の取引でやや反発した。
一部のメディアは、中国当局は米中貿易戦の長期化で、輸出競争力を維持するために、緩やかな元安を容認する方針だとの見解を示した。中国当局は、今後為替介入を実施する「レッドライン」を、1ドル=6.7元台から、1ドル=6.9元台にと大幅な元安水準にする可能性が高いとみられる。
中国金融・経済データを提供するWIND資訊によると、6日オフショア市場が取引開始後から、ドルに対して元相場が下落した。北京時間同日正午、元相場は1ドル=6.6661元とこの日の安値を付けた。この5分後に、中国商務部が340億ドル相当の米製品に対して追加関税を課すると、報復措置を発表した。これを受けて、元相場が反発した。午後3時には、1ドル=6.6425元とこの日の高値を付けた。
北京時間6日午後4時半、オフショア市場では1ドル=6.6480元を付けて取引を終えた元相場は、前営業日比で約0.16%下落した。オフショア市場での終値は同0.05%下落して1ドル=6.6610元となった。
当日人民銀行が公表した対ドルでの人民元為替基準レートは1ドル=6.6336元で、前営業日の1ドル=6.6180元から0.0156元・元安ドル高水準に調整された。
ロイターがこのほど行った調査では、今後3カ月から6カ月の間、ドル高が続くとの見方を示した。
米中貿易摩擦で元安が一段と進む
元相場は3日、一時1ドル=6.72元台に下落し、11カ月ぶりの安値となった。同日、元相場のさらなる下落を回避するため、人民銀行の易綱・総裁などの高官が、元相場を「合理的かつ均衡の取れた水準で安定させる」と相次いで口先介入した。また、中国金融当局は為替市場で元買いドル売り介入を行ったとみられた。
人民銀行の公表では、6月1日の対ドルの人民元基準レートは1ドル=6.4078元だったのに対して、6月29日は1ドル=6.6166元となった。元は1カ月で対ドルで約3.25%と大幅に下落した。
ロイターが市場関係者を対象に行った調査では、米国は通商問題で中国への圧力を強化しているため、元相場が対ドルで一段と下落する可能性が高いとの見方が多かった。一部の関係者は、3.25%の下げ幅を回復するのに1年かかると推測する。
また同調査では、為替アナリスト60人は今後1カ月間、元相場は対ドルで1ドル=6.64元台で推移するが、年末に1ドル=6.57元台に下落し、来年には1ドル=6.50元台に上昇すると分析する。1年後の元相場が1ドル=6.80元~7.20元台までに急落する可能性を示したアナリストもいた。
人民銀「ある程度の元安を容認」
一方、ロイター通信は5日、中国当局高官の話を引用して、国内景気減速と米中貿易摩擦の激化を背景に、中国当局が元安を歓迎する姿勢を示し始めたと報道した。
報道によると、情報筋は「当局はある程度の元安を認めている。しかし、元相場は1ドル=6.90元台を割り込むことを望んでいない」と話した。今後中国当局が元相場の急落の阻止と投資家の信頼回復を目的にする時のみ、為替介入を実施するという。
英調査会社キャピタル・エコノミクスの最新調査によると、中国当局は人民元の動きをコントロールする姿勢を鮮明にした。
当局は2015年~16年の株市場暴落から、「中国経済により強い打撃を与えるのは株安ではなく、(元安による)大規模な資金流出だと認識している」と指摘された。
対ドルで元の急落を回避するために、当局は元の為替レートを決める際「逆周期性因子操作」を再導入するほか、外貨準備高を取り崩して、為替市場で元買いを繰り返していくとみられる。
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の6日の報道によると、中国経済学者の胡星斗教授は、元安の進行でインフレ圧力が高まり、景気の先行き不透明感が強まったとの認識を示した。
「現在、水道や電気など市民の生活コストがすでに高い状況だ。通貨の過剰供給で物価がさらに上昇する恐れがあるなか、大幅な人民元下落で、インフレ圧力が一段と強まるだろう」
人民銀行によると、7月9日対ドルの人民元基準レートは1ドル=6.6393元。前営業日の1ドル=6.6336元と比べて、0.0059元の元安・ドル高になった
(翻訳編集・張哲)