ドナルド・トランプ米大統領は1日、北朝鮮の非核化費用と経済支援について、米国ではなく日中韓が経済負担すべきだと述べた。
トランプ氏は当日、ホワイトハウスで北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長と会談し、会談後の記者会見で「北朝鮮は素晴らしい国になる可能性をもっている」と述べ、完全な非核化に向けた資金支援の必要性を述べた。また、支援は「韓国がすると思う。中国も日本もすると思う」と述べ、日韓には支援準備するようすでに伝えたという。
さらに「米国が多額の資金支援をすることはないと思う。米国は北朝鮮から6000マイルも離れている」とし、極東アジアの再建を3国に委ねた。
専門家らは、トランプ氏が主張してきた同盟国の「防衛費負担」と、米国連邦政府の続く赤字も、今回の発言に影響していると見ている。一部からは韓国の文在寅大統領が唱える「朝鮮半島の新経済構想」が力を得るとの主張も出ている。
多額の非核化費用、ポンペオ氏「アメリカ人の税金で負担することはできない」
英ヘッジファンド、ユリゾン・SLJキャピタルのステファン・ジェン氏は、旧東西ドイツの事例を参考に、北朝鮮の完全な非核化費用は10年間で2兆ドル(約216兆円)と試算した。北朝鮮の核施設の搬出・査察にかかる初期費用の負担問題が持ち上がる。北朝鮮は、6月12日のシンガポール米朝首脳会談の宿泊費や渡航費さえも支援を受けるとみられている。
トランプ氏が北朝鮮経済支援の主体を日中韓に釘付けしたのは、マイク・ポンペオ米国務長官が先月13日に「アメリカ人の税金で北朝鮮を支援することはできない」と発言した延長線上にある。
ポンペオ氏は「北朝鮮制裁を解除して、米国の民間資本が北朝鮮に流れるようにする」とも語った。しかし、米国が北朝鮮の非核化と補償金を負担せず、周辺国に責任を回す場合、今後国際的な議論を呼び起こしかねない。
トランプ大統領の今回の発言が、「米国が日本・韓国の安全保障費用を出している」との認識と関連しているとの見方もある。トランプ氏は大統領候補時代から防衛費における日韓を含む同盟国の負担増を主張してきた。現在、話題となっている在韓米軍の防衛費の交渉でも「韓国の分担割合を大幅に高めるべき」と主張している。
専門家らは、米連邦政府の財政赤字が年間8000億米ドルに達しているため、現実的に北朝鮮支援に関して米議会と世論を説得するのは難しいとみている。特に米議会は、北朝鮮がいつでも非核化合意を覆すことができると見ているため、非核化費用などを簡単には負担しないとの姿勢だ。
トランプ氏が4月22日の米韓首脳会談で「日中韓の3カ国が北朝鮮を助けて、北朝鮮を偉大な国家にするために非常に多くの支援を約束している」としたのも、北朝鮮支援における米国と「線引き」したとの分析がある。
文政権の「朝鮮半島の新経済構想」
日中韓からの北朝鮮経済支援において、韓国では文政権の提唱する「朝鮮半島の新経済構想」が注目を集めている。西海岸(黄海側)と東海岸(日本海側)、非武装地帯地域(DMZ)をH字型に、同時開発する南北統合開発戦略を唱え、(1)東に釜山(プサン)〜金剛山(クムガンサン)〜元山(ウォンサン)〜螺旋(ラソン)〜ロシアへつながる「エネルギー・資源ベルト」、(2)西に木浦(モクポ)〜平壌(ピョンヤン)〜新義州(シニジュ)〜中国を結ぶ「産業・物流ベルト」 (3)東西方向にDMZ自然環境を利用した「観光ベルト」 を構築するものである。非核化の具体的な進展に伴い、北朝鮮制裁が緩和されてから、南北経済協力がすぐ本格化する可能性が高いとみられている。
中国はトランプ氏の「日中韓支援」発言に関して公的な立場を示していないが、以前から、中国東北3省を中心に中朝経済協力の拡大を準備している。習近平・中国国家主席は5月7〜8日の遼寧省大連市で開かれた2回目となる中朝首脳会談のとき、金正恩(キム・ジョンウン)委員長に、非核化に伴う大規模な経済支援を約束したとされる。
韓国大統領府高官は5月9日、同日の中国の李克強首相と韓国の文大統領の会談では、完全な非核化を遂げた北朝鮮には、米国を含む国際社会が体制保証や経済開発などで支援が約束されるべきとの意見を一致させたと述べた。
ロイター通信によると両首脳は、韓国、北朝鮮、中国を結ぶ鉄道建設プロジェクトの可能性について、両国が共同調査を始めることは可能との意見を共有したという。
(翻訳編集・齊潤)
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