陸自が海上輸送力の整備検討、南西諸島で機動展開=関係者

2018/05/08
更新: 2018/05/08

[東京 8日 ロイター] – 陸上自衛隊が、独自の海上輸送力の整備を検討していることが分かった。中国の海洋進出をにらんで発足した水陸機動団などを南西諸島で機動的に展開するため、離島の小さな港に接岸したり、海岸から人員や車両を揚陸できる輸送艇の取得を計画している。実現すれば陸自が初めて船を運用することになるが、乗員育成には5年以上かかることが予想される。

複数の関係者によると、陸自は全長30メートル程度から100メートル程度まで、数種類の大きさの船を候補に調達の検討を進めている。南西諸島の離島間を行き来するには小さめの船が適する一方、日本本土から大量の物資や部隊を運ぶ場合は大きめの船が向いている。

関係者の1人は「長い航続距離がありながら、小さな港にも入れる海上輸送システムをどう造るか検討している」と話す。「本土から沖縄本島までは大きめの船で、そこから先は小型船で、ということも考えられる」と語る。海岸から水陸機動団の人員や車両を上陸させる能力を持たせることも検討している。

日本は中国軍が東シナ海で動きを活発化させていることを警戒し、防衛の軸足を南西方面に移している。陸自は2017年度に沿岸監視部隊の運用を沖縄県与那国島で開始し、今年3月末には相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に水陸機動団を発足させた。

さらに18年度末までに鹿児島県の奄美大島、沖縄県の宮古島にミサイル部隊などを配備するほか、沖縄県石垣島にも基地を新設する。

こうした部隊を機動的に運ぶ輸送力の強化は、次期中期防衛力整備計画の課題の1つ。陸自は輸送ヘリコプター「チヌーク」を保有するほか、新型輸送機「オスプレイ」を新たに導入するが、より多くの人員や車両、物資を運べる海上輸送は海上自衛隊の艦艇に依存している。

陸自と海自は5月8日から、水陸機動団と海自艦が連携した初の共同訓練を九州西方の海域で行っている。しかし、輸送に適した海自艦の数は限られるうえ、大型のため奄美大島や沖縄本島、石垣島など一部の島にしか接岸できない。

陸自にはこれまで船を運用した経験がなく、ノウハウの取得には海自のほか、自前で船を持つ米国、英国の海兵隊から支援を受ける必要がある。「船の建造は3年程度でできるが、人員の養成には7、8年かかるだろう」と、関係者の1人は話す。

 

(久保信博、ティム・ケリー 編集:田巻一彦)

Reuters