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「覚せい剤はコメより流通」北朝鮮は「ヒロポン」で外貨獲得、労働刺激

2017/11/30
更新: 2017/11/30

国際的な制裁により経済にダメージを受けている北朝鮮は、外貨獲得のために、覚せい剤の輸出に力を注いでいる。ヘロインの原料になるケシの生産と輸出量が減少するなか、台頭してきたのは、日本でも「ヒロポン」「スピード」などの名で知られる覚せい剤、メタンフェタミンだ。

米国麻薬取締局(DEA)によると、北朝鮮は中国から安い原料を輸入して、大量生産している。DEAの2012年のレポートによると、北朝鮮製のメタンフェタミンの品質は「良好」で99%純正、利用者は「壁を乗り越える」ほど異常行動を起こすという。

北朝鮮のメタンフェタミン生産に係わる匿名の関係者はDEA当局者に対して「それ(ドラック)を広げた地域…ニューヨーク、ボストン、あらゆるところで、人々は狂いだした」と述べた。

メタンフェタミンは、中枢神経を興奮させる作用をもたらす。強い精神依存があり、興奮を得るため使用量が増加していく傾向にある。効能としては催眠剤の反対で、眠気を覚まし、疲労感をなくし、気分を高揚させ、多弁になるなど。日本では1951年に施行した覚せい剤取締法の対象となったが、40年代まで「疲労除倦」「能率増進」などの宣伝文句をつけられ薬局で一般的に市販されていた。

中朝国境で蔓延する覚せい剤

DEA当局は中国とロシアのメディア、脱北者らの話を分析して、「メタンフェタミンの生産と消費量はこの20年でかなり拡大した。中国および他の国へ輸出されている」と2016年の同年次レポートで指摘した。

覚せい剤により狂わされた人の姿は輸出先だけでなく、北朝鮮国内および中国国境の街でもみられるという。中朝国境の遼寧省は主な北朝鮮製覚せい剤の輸入先として知られる。北朝鮮では中国との国境工業都市で薬物使用者が見られ、また学生、労働者、中産階級と広い幅の社会階層に広がっている。

1970年代から2004年ごろまで、北朝鮮当局が大量に覚せい剤を海上輸送するなど違法薬物販売に関与していたことが複数の国の犯罪事例で明らかになっている。しかし近年、大規模な運搬の摘発はない。レポートは「生産工場が国営ではない個人規模の工場に移り、独立していることを示唆する」とした。

いっぽう、国営であろうが小規模であろうが、薬物蔓延は北朝鮮国内で存在する。しかも「危険な覚せい剤」としての認知は低い。レポートによると「利用できる医薬品や十分な教育を受けていない場合、メタンフェタミンは家庭医薬、嗜好品として使用されている」という。

北朝鮮当局は、疲労を感じさせず興奮をもたらすメタンフェタミンを、国民の結束や反体制活動を抑制するのに利用しているとも考えられている。国際基督教大学のスティーブン・ナジー教授は豪州メディア、ナイン・ニュースの取材に対して「北朝鮮では一般的に覚せい剤の流行が見られ、娯楽や現実逃避など、労働者たちの疲労を紛らわせるのに使われるのではないか」と述べた。

韓国ソウル拠点の北朝鮮人権データベースセンターのリ・クァンヒョン調査員は、北朝鮮人の30%近くが覚せい剤を利用していると推計する。リ調査員は2010年以降に脱北した北朝鮮人を調べたところ、覚せい剤利用率が非常に高かったという。ある脱北者の一人は「薬(覚せい剤)は米よりも一般的だ」、別の脱北者は「一番手っ取り早く気持ちよくなる方法だ」と明かした。

(文=マシュー・リトル/翻訳編集・佐渡道世)