分析 トランプ大統領の態度が一転 「一つの中国」容認の理由は(2)

2017/03/07
更新: 2017/03/07

大物腐敗幹部の逮捕の裏にはオバマ大統領の決断が

しかしながら、報告書での専門家の提案や、イヴァンカさんの中国寄りの行動を踏まえても、「有言実行」を実施し続けているトランプ大統領が、習主席からの電話一本で「一つの中国」原則の見直しという最大の切り札を手放すに至った。決め手となる理由が何だろう。電話会談で、習主席はいったい何を伝えたのだろうか。

12年2月に江派の王立軍が成都の米国領事館に亡命を求めた時、王立軍が中国当局の最高機密を米国に提供したため、オバマ大統領が常委9人と同等の発言権を手に入り、事態に影響力を持つ「中国の10番目の常委」になったとの笑い話が流れていた。

新紀元の独自の分析によると、12年2月に江派の王立軍が成都の米国領事館に亡命を求めた時、習派と江派の内部闘争について、オバマ大統領は習サイドに付くことを決定したため、王立軍から入手した極秘資料は全て習主席の手に渡った。その結果、習陣営は江派がクーデターを画策していたという証拠をつかみ、後の薄熙来や周永康などの逮捕につながった。

トランプ大統領が「一つの中国」原則に尊重の意を示した本当の理由

台湾の中国問題専門家・明居正氏は、「江派との生きるか死ぬかの戦いの真っ最中にいる習主席が直面している内政問題は、トランプと比べてはるかに深刻だ。さらに中国には経済危機が起きる危険性も潜んでいる。今秋に予定されている19大の前に習主席が政権内部をいかに掌握するかは、19大までの8カ月間の反腐敗運動の成果にかかっている。習政権の誕生当初、オバマ政権当時のバイデン副大統領は「習主席に余計な面倒を掛けないように」と語り、ホワイトハウスが外交問題に邪魔されず国内問題に集中できるような環境を作り習主席をサポートしていた。トランプ大統領がこの既定路線を踏襲する可能性は十分ありえる。習主席に「投資」し、主席が政権問題を解決した後に改めて米中交渉を行っても遅くはない」と明居正氏は分析している。

新紀元は以前に、中国空母の台湾沖通過や中国海軍による米無人潜水機の奪取、中国軍戦闘機による米軍機への挑発行為などは全て、海空軍を掌握している江沢民派が、習政権のかく乱を狙って行ったものだと報じている。各種の問題を抱える習陣営は安定した環境が最も必要であり、米国との衝突はできる限り避けたいはずで、このようなことをする理由がない。江派が軍を使って他国との間に故意に紛争を生じさせていたため、17年1月には、中国海軍の呉勝利上将が責任を追及され、海軍司令から外されるという事態にまで発展した。その後に海軍司令に就任した沈金龍は中将に過ぎなかった。

こうしたことから、習主席は先の電話会談で、トランプ大統領に対し、「一つの中国」問題以外は全て話し合う用意があると伝えたのではないかと推測される。さらに習主席は、アメリカが重要視する南シナ海問題などに対し、かなり譲歩した可能性もある。具体的には人工島の建設を中止する、島から中国軍を撤退させるといった発言をしたのではないかと想像される。こうした目に見える譲歩を中国側が行えば、トランプ大統領は米国民に対し面子を保つことができ、習主席は19大までの限られた時間を江派の一掃に費やすことができる。

トランプ政権のマティス国防長官は今年2月に来日した際、南シナ海問題について「外交ルートで解決することが望ましい」と発言している。一方中国政府は近頃、貿易問題や為替問題、南シナ海問題、北朝鮮問題などについて、水面下で調整を進めていると見られる。こうしたことから、米中が貿易問題について真剣勝負に出るのは、19大以降に持ち越されるのではないかと推測される。

 

(文・季達 翻訳編集・島津彰浩)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。