日本時間9日午後16時半頃、米国大統領選挙の共和党候補、ドナルド・トランプ氏の選挙人(538人)獲得数が過半数の270人を上回り、民主党候補のヒラリー・クリントン氏を破り、第45代大統領となることが確実になった。
そこで、次期トランプ政権の下、世界情勢がどのように変化するのか―――在米中国政治評論家の石蔵山(せきぞうざん)氏が以下のように分析した。
石氏は、「対外政策における重要な議案に対し、通常、民主党と共和党は事前に合意しておく必要がある。『両党のコンセンサス』ともいう。歴代の大統領もこの手順を踏み外すことはなく、一定の妥協の下、自らが主張するところの対外政策を強引に推し進めることはなかった。しかし、トランプ氏は政治経験がなく、選挙中に自らの主張を率直に訴え、その資質を疑われるような突拍子もない発言もあった。今までのトランプ氏の言動から、自分の主張を押し通す人物であることがうかがえる。トランプ氏が両党のコンセンサスという伝統に基づいて、政権の要職人事を決めていくか否か今後に注目したい。これによって、米国と世界情勢が大きく変わるだろう」と述べた。
また、「トランプ氏は過去の大統領と異なり、政策に自己の主張を反映していく可能性が非常に高いと想われる」と予測した。
経済面については、「『環太平洋経済連携協定』(TPP)から離脱、中国とメキシコに大幅な輸入関税を課したならば、米国が支持してきたグローバル化の流れが大きな転機を迎えることを意味する。これによって、第二次世界大戦後に築き上げられた欧米経済体系(世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO))が崩壊を迎える可能性も否定はできない。その場合、日本、韓国、中国など対米貿易黒字の下で成長をしてきた東アジア各国の経済が打撃を受けることになるであろう」とした。
外交と政治の面においては、「トランプ政権の下の米国はこれまでの守りの姿勢と異なり、『攻め』との積極的な姿勢に変わるだろう。トランプ氏は実業家としては成功しているが、政治経験はゼロのため、政策の制定に関してはブレーンのアドバイスに頼る可能性がある」と述べた。
さらに、「イギリスのEU離脱、トランプ米大統領の誕生などの出来事から、反グローバル化という流れが拡大しているように見える。今後、各国、特に主要経済大国はより混乱した世界情勢に直面していくことであろう。過去の歴史を顧みたならば、混乱をくぐり抜け新たな調和を迎えるには、一人ひとりの寛容さ、善良さ、謙虚さ、誠実さと自制心が欠かせないものである」という見解を示した。
クリントン氏の敗因は?
トランプ氏とは対照的に、30年間以上の政治経験を持つ、優秀な弁護士でもあるクリントン氏について、石氏は「ベテラン政治家のクリントン氏は、場所や相手によってどのような発言をすればよいかをよく熟知している。相手によってどのような妥協をすればよいかもよく分かっている。しかし、私的メール問題などに加え、中国政府との近い関係が、一部の支持を得られなかった理由のひとつではないか」と持論を述べた。
先月28日、長年中国当局に迫害されてきた人権弁護士の高智晟氏は、『ヒラリーに投票しないで』という論評を大紀元に発表していた。
文中、「クリントン氏は、国益のためとして密かに取引し、人権問題で中国当局に譲歩した。中国当局から800億ドルの資金を受け取った」と、その見解を示していた。
クリントン一家の慈善団体である「クリントン財団」に、中国系企業からの寄付が流れていたことは明らかになっている。
現在、米国では、「クリントン夫妻に最も近い知人」といわれるバージニア州のテリー・マコーリフ知事が、中国人実業家から違法な選挙資金の提供を受けた疑いで米連邦捜査局(FBI)と米司法省によって調べられている。
しかも、この中国人実業家は知事を介して、クリントン財団にも200万ドル(約2億4000万円)も寄付している。この中国人実業家は中国東北部の遼寧省丹東市に本社を置くゼネコンを主体とする遼寧日林実業グループの王文良会長である。
米国の法律では、大統領選や知事選などの立候補者が外国人から選挙資金の提供を受けることは禁じられている。つまり、クリントン財団に入った寄付金がヒラリー・クリントン氏の大統領選の資金に流用されたとなれば、大問題に発展するのは間違いない。
(翻訳編集・張哲)
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