南シナ海問題で仲裁裁判所が中国の主張を否定したことを受けて、17日と18日の両日、中国河北省、湖南省、江蘇省などの都市で、一部の市民が米国系飲食チェーン、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の店舗前に集まり抗議活動を行った。
抗議活動を行った人達は、「ケンタッキーを絶対に食べない」、「マクドナルドを絶対に食べない」、「米国と日本と韓国の製品をボイコットせよ」などの横断幕を揚げていた。また、KFC店内で食事をしていた客に対し、罵声を浴びせたという。
中国当局は事態の拡大を恐れ、18日と19日、国営新華社通信や中国共産党機関紙「人民日報」をはじめ、国内メディアが相次いで評論記事を掲載することで、いわゆる「愛国者」による抗議行動のエスカレート化をけん制した。
当局は新華社通信の評論記事で、「ケンタッキーへのボイコット」、「米アップル社のiPhoneを壊すこと」は感情的だと指摘し、「同胞の物を壊すことが愛国の表れなのか?自分たちが自分たちをいじめているのではないか」と非難した。
また同記事の最後に「この茶番を作った下手な脚本家たち」と記し、いわゆる愛国抗議活動の背後で操っている人物がいることを示唆した。
一方、「人民日報」は同SNS微信(ウィチャット)公式アカウントで評論記事を発表し、「経済グローバル化した今日、国内外衣食住のすべての業界の製品に中国人労働者が関わっている」、「われわれはすでにケンタッキーとマクドナルドの株主になっている。彼達をボイコットすることはわれわれ自身をボイコットすることになる。ケンタッキーなどはほかの多くの産業と関わっており、多くの中国国民の生活にも関係している」、「アリババの大株主は日本のソフトバンクだから、「淘宝」(タオボウ)をボイコットしたらどうですか?」と国内の多くの産業に日米などの企業が参入していることから、「ボイコットしたら、国民の生活を誰が養ってくれるのか」とボイコットすることが不可能だと指摘した。
中国国内の時事評論家・傅桓氏は、南シナ海をめぐる仲裁判決が下された後、中国国内で、反米反フィリピンなどの「愛国活動」が徐々にネット上から実体社会に広がっていくうちに、愛国者たちは逆風にさらされていると指摘した。
傅氏は、国内で民族主義や愛国主義を煽ってきた中国共産党内の極左勢力の動きに対し、中国当局は抗議活動がコントロールの効かない深刻な事態になるのを強く警戒しており、メディアを通じて沈静化を図った可能性が高いと分析した。
(翻訳編集・張哲)
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