6月下旬から連続的な豪雨により、中国長江中、下流域の多くの地域で深刻な水害が多発している。長江幹線堤防や江西省の九江長江大堤防など、主要な治水施設においても973箇所もの危険個所が見つかり、深刻な状況が続いている。
長江中・下流域の全域で警戒水域を超過
長江の上・中流から大量の水が押し寄せたため、江西省北部に位置する中国最大の淡水湖、鄱陽湖では逆流が発生した。その影響で江西省の長江流域と鄱陽湖の水位が急速に上昇し続け、全流域において警戒水位を超えた。同湖は複数の長江支流の合流地点で、長江の水流を調節する機能を果たしており、治水・防災施設としても重要な役目を担っている。
7月6日午後1時現在、武漢堰の水位は28メートルに達し、同市内の景勝地、龍王廟公園内の龍王廟石碑の台座部分が水没した。
長江委防弁(防災部門)の陳桂亜副主任は、現在湖北省監利県から南京全域にかけての長江の主流が同地域の警戒水域を超え、非常に深刻な事態を迎えていると発表した。
長江水文局も、長江の支流の多くが警戒水域を超えており、想定外の大洪水が発生する恐れがあると発表した。4日、洞庭湖の全ての流域でも警戒水域を超えたため、湖南省の柘溪ダムの最大流入量が毎秒2万立方メートルを超え、千年に一度の大災害という深刻なレベルに達するとみられている。
江西省九江長江大堤において水の噴出が発生
ネットメディア、中新網の報道によると、6月30日以来、各地で水害が頻発しており、7月4日夜、長江大堤防が位置する武漢市青山区の倒口湖湖底から水が噴出した。翌5日には江西省水文局が、今年最初の洪水赤色予報という最高レベルの警報を出し、6日午前11時45分には、九江市永安郷の長江大堤永安地域でも水が噴出した。
また澎湃新聞網の報道によると、6月30日から長江流域5省の各堤防に合計973カ所の危険個所が発見された。内訳は長江幹線堤防5カ所、洞庭湖と鄱陽湖地域堤防に126カ所、その他の堤防842カ所。
155省(市)の累計降水量が過去最大量を更新
今年の河川増水期で、中国南部では21回もの地域性暴風雨が発生している。全国の平均降水量も例年の同時期と比較して2割以上増加しており、豪雨を記録した1954年以来、62年ぶりの最高水準に達した。
また全国155ケ県(市)の累計降水量はこれまでの記録を上回り、広東省信宜市など15ケ県(市)でも、一日の降水量がこれまでの最高記録を更新した。
現在、全国222河川において警戒水域を超えた洪水が発生しており、過去5年間の同時期における最多を記録している。26河川では保証水位を超えた洪水が発生しており、6河川では歴史的に類を見ない大型の洪水が発生。さらに主要な河川に合計23回もの洪水が発生した。洪水の発生頻度も例年に比べ3割以上増加した。
民政部の統計によると、5日までに洪水被害を受けた範囲は江蘇省、安徽省、江西省、河南省、湖北省、湖南省、広西省、重慶(直轄)市、四川省、貴州省、雲南省の11省(市区)に広がり、これまでに128人の死亡者、42人の行方不明者を含む約2333万5000人が影響を受けている。倒壊家屋は約4万1000軒で、さらに24万8000軒が何らかの被害を受けた。29万5200ヘクタールの農地が水没し、今期の収穫は絶望的。直接的な経済損失だけでも381億6000万元(約5,735億7200万円)に達すると見られている。
当局「大洪水の発生する危険性が高まっている」
5月31日に武漢で長江防災本部が招集した2016年度の防災指揮長のテレビ会議では、今年の増水期に長江中・下流域に大洪水が発生する可能性が非常に高まっているため、十分な警戒態勢を取る必要があると発表された。
また中国国家防総(防災本部)でも、大洪水の発生する可能性をこれまで複数回にわたって発表している。
(翻訳編集・島津彰浩)