世界的に有名なニュース写真や映像を配給する「コービス・イメージズ」が、中国企業に買収された。コービスは1989年の天安門事件に関する写真も大量に保有しており、多くの海外メディアは、これらの写真が自由に使用できなくなるのではと懸念している。香港メディアが今月25日に伝えた。
中国の「ビジュアル・チャイナ・グループ(VCG)」の関連会社「聯景国際」は、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏が設立した画像配給会社「コービス・イメージズ(Corbis Images)」を買収したと22日、発表した。これによりコービスの全資産と共に、傘下の「ベットマン」と「シグマ」が保有している5000万のオリジナル写真の権利も、中国企業へ移った。
写真の中には、いまだに中国政府が検閲している1989年の天安門事件の記録が数多く残されている。中国民主化運動の象徴とされる、戦車に立ち向かう反逆者「タンクマン(戦車男)」の画像も含まれる。多くの海外メディアは、天安門事件関連の画像が自由に使えなくなる恐れがあると懸念を伝えた。
また、この買収について、学生運動の元リーダーの王丹氏とウアルカイシ氏は27日、VCGに対して、天安門事件の画像などの使用を制限しないよう求める声明を発表した。
天安門事件は1989年6月4日、元胡耀邦国家主席が亡くなったことをきっかけに、民主化を求めて多くの学生らが天安門広場に集結しデモを行った。これに対して、共産党政権は軍隊を出動させ武力弾圧し、多数の死傷者がでた。
翌日の6月5日、軍による弾圧を止めようと戦車の隊列の前に立ちはだかり、行く手をさえぎった青年が、後に「タンクマン」と呼ばれる王維林さんだ。王さんは直後、複数の男に連れ去られ、消息不明となっている。
事件当時、北京に滞在していたという作家オービル・シェル氏は、王維林さんのその後について「ただ混乱の中、群集へ引き戻されたか、あるいは個人を特定され(当局により)厳しい罰を受けた」と、報道基金「フロントライン」の2006年のインタビューで答えている。
「タンクマン」が戦車に立ち向かう様子は、米CNNや英BBCら取材班が映像を残していて、世界中に「無名の英雄」として配信された。『タイム』誌は王さんを「20世紀最も影響力のあった人物100人」に選んだ。
(翻訳編集・山本アキ)
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