国外投資先を探る中国個人投資家、米株式市場参入へ

2016/01/12
更新: 2016/01/12

中国資本の国外流出が加速化するなか、これまで、中国国内投資家は海外株式市場へ参入することはできなかったが、米株式市場で株取引するためのアプリが相次ぎ開発されたことを受け、状況が一変した。ウォール・ストリート・ジャーナルが報道した。

手順は極めて簡単で、投資家はまずパソコンやスマートフォンに株取引のアプリをインストールする。ネット上で中国の個人投資家向けの金融業務を展開している会社、積木盒子(jimu.com 本部・北京)の顧客である男性は、インストール後、わずか数分間でユーザー登録と500ドル(約6万円)の初期費用の支払いを済ませてからすぐに米上場企業の株式を購入できた。取引手数料は1株0.005ドル(約0.6円)と格安だ。

報道では、このアプリは中国中産階級が米株式市場へ参入する道筋を開いたと評した。「(昨年8月の人民元切り下げを受け)元安がさらに進むとみられているなど、国内での投資の選択肢が限られているなか、中産階級はもっと効果的な資産運用方法を求めている」

積木盒子の創業者の1人、バリー・フリーマン氏によると、同社がターゲットとする顧客は一定の経済力のある若年層。インターネットの利用を好むこの年齢層は、アプリさえあれば中年層以上の世代よりも積極的にこのスタイルの投資に踏み切る。実際、積木盒子のアプリが導入されて最初の3日間で開設した米株取引口座数は、5000に達したという。

中国ネット証券会社の老虎証券(Tiger Brokers)や、香港富途証券有限公司もまた、中国人向けにニューヨーク株式市場での取引アプリを開発している。老虎証券はウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、7月に同アプリを導入してから、同社が抱える中国人投資家の数は10倍に増加し、そのうち25~30歳の若年層投資家数が大幅に伸びたと説明している。

不動産市場の減速や昨年夏の株価大暴落、債券市場の債務不履行案件の激増などにより、中国人はリスクの低い海外の投資先に目を向けるようになった。一部の統計によると、2015年上半期には572億ドル(約6兆8114億円)が中国から流出した。また、昨年11月の中国外貨準備高が2年ぶりの低水準となったことも、中国から資本が撤退する前兆と見られている。

一方、米国の世界的コンサルティング会社、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によると、20年末までに、中国人1人当たりの投資可能資産は現在の110万億元(約2000兆円)から196万億元(約3580兆円)に増える見通し。

積木盒子や同業他社が取り込もうとしているのは、資産30万元から70万元(約550万~1280万円)の小規模投資家。一般的に最低投資額を設けていない。順風満帆にも見えるが、中国資本の急激な海外流出が起これば、当局がこれらの会社に関連業務の停止を命じる可能性もある。

(翻訳編集・桜井信一、叶子)