国際通貨基金(IMF)は11月30日、中国の人民元を米ドル、ユーロ、ポンドと円に次ぎ、特別引き出し権(SDR)第5番目の構成通貨として採用した。人民元の構成比率は5通貨のうち10.92%で、円とポンドを抜いて第3位の位置づけだ。来年10月から実施されるという。
人民元のSDR採用が正式に決定したことで、興奮した中国国内メディアは「元はドルの国際基軸通貨としての地位を終わらせるだろう」と強気の論文を出した。しかし、市場関係者の多くは人民元のSDR採用の象徴的意義が実質的意義を上回ると認識する。
一部の専門家は、人民元の構成比率が予想より低いことと、来年10月から実施されることから、IMFがドルの国際基軸通貨としての地位に影響されないよう、段取りしたのではないかとみる。
予想より下回った構成比率=香港紙
香港紙「経済日報」(12月1日付)は人民元のSDR採用決定に関して、人民元の構成比率と実施する時期との2つの点に着目しなければならないと主張した。1つめは、市場関係者は人民元の構成比率が11~14%と事前に予想していたが、実際定められた10.92%は市場予想より下回っている。2つめは、IMFが構成比率を見直した結果、ドルが41.73%と今まで変わらなく、ユーロがこれまでの37.4%から30.93%に、円とポンドも8.33%と8.09%に引き下げたことだ。
これについて、同紙は専門家の見解として、ドルの基軸通貨としての地位は影響されず、構成比率が引き下げられた欧州連合(EU)やイギリス、日本と比べて、米国の発言権がさらに強まったと伝えた。
2016年10月1日から実施 IMFは各国銀行に調整うながす
来年10月1日から実施されるという点については、IMFが各国政府と中央銀行に、充分な調整と考察期間を与える目的があると、専門家は分析する。
また、一部の海外メディアは、実施までの10カ月間に、国際社会が中国当局に対して、金融改革の約束をどれほど履行できるかを確認することができると伝えた。中国政府は過去、世界貿易機構(WTO)への加盟を試みた際、国際社会に対して知的財産権に関連する法的整備や貿易関連法令の透明化などの公約を行ったが、その実態はあいまいだ。
欧米諸国の世論は、中国がWTO加盟の約束事項を確実に履行しておらず、言葉遊びのような駆け引きをしているだけだと批判している。米国世論もこれまで「騙された」との声が相次いだ。
この教訓から、人民元のSDR構成通貨採用決定に伴い中国政府は変動為替相場への移行など、金融改革・自由化の約束事項の履行や国際ルールの遵守を各国からより強く求められ、より厳しい目を向けられる。IMFのラガルド専務理事は採用決定後、「(中国の)制度改革が進むかどうか、今後も監督していく」と強調した。
一方、中国人民銀行(中央銀行)の易綱・副総裁は12月1日に開かれた記者会見で、「中国の長期的目標は、変動為替相場制度で市場介入を極力少なくすることだが、現在は過渡段階で為替相場が大きく変動し、また外貨資金の異常変化が現れた際、中央銀行は適切かつ断固たる介入を行う」と述べ、「今後は人民元改革を漸進的に行う」との方針を示した。
(翻訳編集・張哲)
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