【大紀元日本7月16日】世界的な高級ブランドは、中国での振る舞いに向かい風を受けている。国内の民間の小売消費は疲弊し、「お得意様」だった共産党員や政治家たちは、習近平政権の反腐敗キャンペーンにより遠のいていった。目立つブランドロゴを掲げることが仇となり、いまやその顔を「隠す」ことを新戦略としている。
同キャンペーンが本格化する2013年以前、政界や商業界では互いの関係性を深めるために高価な贈り物をするのが慣例だった。富裕層調査会社・胡潤百富(Hurun Report)によると、中国政府の裁量的経費の10%が、その贈与にあてられていたという。
現政権下で、すでに何百人もの汚職高官が摘発され、失脚した。贅沢の象徴だったスイス製の腕時計、イタリアの高級車、高所得者が好むアルコール飲料などの売上は軒並み下がった。
胡潤会長で代表研究者ルパート・フーゲワーフ氏は「高級贈与に関する政府の取り締まりで、贅沢品の売上は2年間で30パーセント下落した」と、今年初め頃に発表した。
中国政府高官は現在の状況を「反贅沢キャンペーン」と揶揄するようになった。ブランドのロゴが強く主張するようなグッチ、プラダ、ルイ・ヴィトンなど世界的有名高級ブランドは忌避されるようになり、中国という巨大マーケットで活躍の場は狭められた。
特に中国展開に力を入れていたというグッチは、アジア太平洋地区(オーストラリア・韓国を除く)における今年度第1四半期の小売販売成績を前年同期比で10%下げた。
消費はより若く、女性向け、ファッション性に重き
しかしながら中国で中間富裕層が拡大し、西洋諸国の高級ブランドが好まれるのは変わらない。この層は経済の成熟しきった欧州よりも約20歳若く、女性が多くなっている。また前述のロゴイメージの強いブランドよりも、ファッション性に重きを置くようになった。
現在、世界の高所得者向け商品の約30%を中国人が占めるといい、今年は35%に達すると専門家は指摘する。国際コンサル企業マッキンゼーは、中国では2020年までに約4億人が中流階級層になると予測した。一方、その半数以上がまだ他の先進国よりも所得が低い、格差社会であることも指摘した。
中国高官の子息である「富二代」の多くは、欧州や北米に留学し、海外で教育を受けてきた。そのため、中国で常識的にとられていた「富裕層があからさまに最高級品を身につけ富を顕示する」ことは、国際的には受け入れられないことに気づいている。
グッチの中国市場担当者は「北京や上海、杭州ではグッチは好まれていない。もはや魅力的な商品として見られていない。大きく目立つロゴのせいだろう」と敗因を語った。
ブランド品には憧れるが、ひけらかすような品のない行為はひんしゅくを買う―このような複雑な心理をついて、グッチは若年富裕層向け姉妹ブランド「Bottega Veneta(ヴォッテガ・ヴェネタ)」の売り込みに力を入れている。商品に「G」のブランドマークはなく、シンプルなデザインの革製バッグだ。高級ブランド・メーカーにとって、中国戦略は「ロゴを隠す」ことのようだ。