南シナ海領有権問題 フィリピンが仲裁裁判 口頭弁論始まる

2015/07/08
更新: 2015/07/08

【大紀元日本7月8日】南シナ海の領有権問題をめぐる仲裁裁判の口頭弁論が7日、オランダのハーグにある常設仲裁裁判所で始まった。フィリピン政府は一昨年、同海域のほぼ全域の領有権を主張している中国に対して「根拠がなく国際法上、認められない」として司法判断を求めていた。この予備審理の後、裁判の実施が正当かどうかを裁判所が決定するため、動向が注目される。

 フィリピン政府の代表団はこの問題を説明するため、デルロサリオ外務大臣、デリマ法務大臣、ガズミン国防大臣を含む政府高官を派遣した。「中国は一方的で、平和的に問題を解決するには国際的な司法判断に委ねるほかはない」などと主張を述べた。

 中国政府は「仲裁手続きは受け入れない。フィリピンの政治的挑発だ」と裁判に参加しない姿勢を示している。6日、趙鑑華・駐フィリピン中国大使は「二国間交渉による問題解決が最適だ」と述べ、比中両国間交渉での解決を訴えた。

 仲裁裁判所では7日に1回目の予備審理となる口頭弁論が行われ、13日までに開かれる予定。その後、裁判の対象だと認定されれば、本格的な審理が始まる。

 今後の展開について、米国の海外向けラジオ放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は6日、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の学者、東南アジアの安全保障に関する専門家サイヤ氏の見解を伝えた。同氏は、仲裁裁判所が裁判の対象と認定する可能性はあるとしながらも、「判決を下す勇気があるか、問題を根本的に解決できるかが注目される。あるいは、双方にそれぞれ有利な一部決定を下して、あいまいなままで終わるのか」との見通しを述べた。

 フィリピン政府は国連海洋法条約に基づき、2013年1月、中国を国際仲裁裁判所に提訴。中国が南シナ海の9割の領有権を主張する根拠としている「九段線」の違法・無効性の認定などを求めた。さらに、昨年3月には審議を促す陳述書を提出した。

 豊富な海洋資源を埋蔵し、海上交通の要衝でもある南シナ海の領有権をめぐり、中国とフィリピンを含む東南アジア諸国は、1960年代末期から摩擦を繰り返してきた。こうした中、中国がいま南シナ海の南沙諸島の7つの岩礁で埋め立て工事を行い、人工島を建設しており、上記諸国のほか、米政府からも反対の声が強まっている。
 

(翻訳編集・叶子)