【大紀元日本6月11日】ミャンマー最大野党・国民民主連盟(NLD)の党首で同国民主化運動の指導者でもあるアウンサンスーチー氏は、中国共産党の招待で10日午後北京に到着、5日間の初の中国訪問が始まった。一方、中国メディアは報道を控えている。政府による報道規制が敷かれているとの情報もある。
10日午後4時ごろ、白の上着に緑色のスカートの伝統衣装をまとったスーチー氏は北京首都国際空港に姿をみせた。中国国内テレビのニュース画面では、待機していたメディアへの挨拶はなく、足早に車に乗り込んで空港をあとにした。同日夜、中国各ニュースサイトは国営新華社通信の約60文字のニュースを転載し、中国共産党中央連絡部の王家瑞・部長がスーチー氏とその訪問代表団と会談したと伝えたのみで、ネット上には、訪問の関連報道はほとんどない。
在米中国語メディアは、メディアを統制する中央宣伝部が内部で「報道自粛命令」を出したと伝えた。
また、中国側は訪問の詳しい日程を公表していない。外交部の洪磊報道官は10日の定例記者会見で、「党と国家指導者と会談する予定」と述べるに留まった。一方、NLDのスポークスマンは習近平総書記と李克強・総理(首相)との会談予定を明かしていた。
世界的有名な民主化運動指導者である同氏の訪問に、民主・人権を圧制する中国政府は気まずさを感じ、対応に手こずるのは間違いないであろう。それでも同氏を招いた背景には、「ミャンマー現政権に圧力をかけるため」との見方が多い。
軍事政権終了後の2011年に発足したミャンマー現政府は、一連の政治改革を打ち出し、日本や欧米諸国との関係改善に取り組み、経済制裁措置が相次ぎ解除された。一方、軍事政権時代に従属していた最大の投資国だった中国に対し、現政府は依存からの脱却を図っており、中国政府もミャンマーと日米諸国の関係改善に警戒心を抱いている。こうした中、失われたミャンマーへの影響力を回復させ、同国での利益を守るため、中国政府は今秋の総選挙で優勢が伝えられているNLDに近寄ることを決断し、党首のスーチー氏を招待したとみられる。
訪問招待をめぐっては外交部の「否定的な意見」に習総書記が激怒し、「しっかり宣伝しなさい」と命令したという香港メディアの報道も出ている。