【大紀元日本1月23日】中国軍事力向上のシンボルとされる中国海軍の初の空母「遼寧」について、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは19日、1990年代後半に行われた未完成空母の購入背景を伝えた。この報道を分析する米専門家は「中国軍部が最高指導部の支配下に置かれていない」と軍の暴走を懸念している。
2012年9月に正式に就役した遼寧号は、旧ソ連の未完成の空母ワリャークから改造したもの。報道によると、船は中国海軍当局者の依頼を受けた元人民軍所属バスケットボール選手で実業家の徐増平氏が、ウクライナとの購入交渉役となり、海軍に引き渡した。
購入費用として、徐氏は香港の友人から担保なしで230万香港ドル(当時)を借り入れて用意した。いまだに支払いは続けている。船舶や中国へのえい航代などにかかった1.2億ドル(142億円)は「政府から1分(0.01元)も受け取っていない」と明かした。
報道によると、1998年当時の朱鎔基首相は海軍の予算請求書に「空母の建造計画がない」と記され、購入計画が組まれていなかったことが示唆されている。
中国問題専門家の1人、米マイアミ大学のジューン・ドライヤー教授は、米国の海外向け放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材で「海軍が最高指導部の許可を得ず重要プロジェクトを進めたことになる。軍が勝手な行動をとるのは可能だということは非常に脅威」とその驚きを話した。
またドライヤー教授は同様の事例を挙げた。2011年1月、当時の米ゲーツ元国防長官訪中の際、中国空軍は次世代ステルス戦闘機「殲20」の試験飛行を行い、軍事力をアピールした。長官は当時の軍トップ・国家主席胡錦濤氏との会談でこのことに触れたが、胡氏はことをまったく知らない様子だったという。
ドライヤー教授は「中国軍部のタカ派はとても好戦的でかつ挑発的。最高指導部を振り切って暴走しかねない」と警鐘を鳴らした。
一方、中国の軍事動向に詳しい、米シンクタンク「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー上級研究員も近い認識を持っている。「最高指導者の習近平氏は軍を大整頓しているが、いかに迅速に進めるかが正念場だ。反対勢力に反撃の余裕を与えてしまうと、失敗もありうる」