【大紀元日本1月21日】「必ずここに戻ってくる」。香港の民主化デモを報道したため、中国から自主退去した独週刊紙ディー・ツァイト中国支局のアンゲラ・コックリズ記者は独国家放送局ドイチェ・ヴェレのインタビューでこう話した。
コックリズ氏は長年中国で取材を続けてきたベテラン記者。昨年10月、同僚の中国人女性とともに香港で民主化デモを取材した。本土に戻ったのち、同僚は「騒乱挑発罪」の容疑で逮捕され、釈放の見通しはいまだに立っていない。この容疑の解釈はあいまいで、反体制派を取り締まるため当局が乱用している。
コックリズ氏自身は公安当局から4回ほど取り調べを受け、4時間半に及ぶ長丁場もあった。当時の状況について「ビザの更新は拒否される」と脅迫され、「スパイで香港デモの組織者」と認めるよう誘導尋問されたという。「同僚の女性はあなたがスパイだと供述した」と揺さぶりを掛けられ、取り調べは「心理戦のようだった」と振り返った。
中近東の民主化運動「アラブの春」発生後、外国人記者の知人の多くは中国公安当局との摩擦を経験し、なかにビザの不発給処分を受けた者もいたとコックリズ氏は述べる。しかし「スパイの『自白強要』までされた人物はいなかった」という。ドイツ大使館から「中国当局に逮捕されると、大使館は抗議以外何もできない」と弁護士を雇うよう勧められた。強い恐怖に駆られ、コックリズ氏は中国を離れることを決意した。
今も拘束中の同僚の身を案じている。私生活でも2人は仲が良かった。当局に対し、釈放に向けて働きかけてきたが、進展はない。「どうしても彼女を助けたい」と訴えを継続するつもりだ。コックリズ氏は「いつかまた中国で取材活動をしたい」と希望をまだ捨てていない。
北京の中国外国人記者クラブ(FCCC)は昨年9月、中国の取材環境が、2008年の北京五輪前後と比べて急激に悪化したとの報告を発表した。中国政府が報道各社の記者用査証(ビザ)更新の拒否や、手続きを大幅に遅らせるなど、圧力を強める傾向にある。外国人記者の取材を受けた市民が当局から脅かされる事例も報告された。