天安門前の車炎上事件 再び注目される12年前の焼身自殺事件

2013/10/29
更新: 2013/10/29

【大紀元日本10月29日】中国の北京市内である天安門広場で28日、自動車が観光客らの群衆に突っ込み、炎上した。車内にいた運転手ら3人と、巻き込まれた観光客2人が死亡した。観光地として有名な天安門広場だが、近年、迫害を訴える民衆による抗議活動が繰り広げられ、国内外で注目を集める舞台でもある。この度の事件も抗議のために故意に起こしたものではないかとの見方が強い。過去の事件を受けて、警察当局が厳重な警戒態勢を敷く地域でもあるだけに、国内外に大きな衝撃を与えた事件となった。

事故の詳細はまだ明らかになっていない。しかし、日本や欧米のメディアは、天安門広場で起きた過去の抗争として、2001年に5人の男女による焼身自殺事件に言及している。

この事件は中国共産党から弾圧を受ける気功法・法輪功を習うものが自殺を起こしたと中国メディアが主に報じていた。この事件で2人が死亡、3人が全身火傷の大ケガを負った。中国メディアは法輪功がこの悲劇を招いたとする「宣伝」報道を連日流した。一方、法輪功側は事件は民衆に対して法輪功を「敵視」するために中国当局が作り上げたプロパガンダだったと反論し、数多くの証拠を示した。

中国国内の報道を鵜呑みにした日本を含む海外メディアも「法輪功メンバーによる焼身自殺事件」と報じたため、法輪功が起こしたとするには多くの矛盾があることはあまり知られていない。

当時の状況はこう報じられていた。「2001年1月23日、旧暦の大晦日のため天安門広場を訪れる観光客はほとんどいない」「新華社は、午後2時41分、一人の男性が人民英雄記念碑近くでペットボトルに入ったガソリンを自らの全身に浴び、ライターで自分の体に点火体に火を付けた。わずか1分半後に警官が消火した。数分後、4人の女性が同様に焼身自殺を図った」

海外有力メディアも事件を疑問視

米国の大手メディアや、中国の内情を伝える衛星テレビ局「新唐人テレビ」(本部、米国)が作成したドキュメンタリー番組「偽火(False Fire)」は、事件の不可思議な点を報じている。

1、「偽火」の映像に、警官が、皮膚や服がすすだらけになった女性の自殺者の頭部を強打する瞬間が収められている。この女性は死亡したと報じられている。自殺者に対してなぜ警察は暴行を振るうのだろうか? 米ボストン・グローブ紙も、「軍のコートを着た男性により頭部を殴打されたため死亡したのではないか」と報じた。

2、中国国営放送の報道映像では、自殺者が座りながら「法輪功は素晴らしい」と叫び終えるのを待っているかのように、警官がその横に立っていた。その後、身体の火がすでに消えた自殺者に消火毛布を被せた。また自殺者が持ち込んだとされる、ガソリンらしきものを入れていたプラスチック製の容器は、自殺者の膝下にあったにもかかわらず、燃えていない。

3、自殺を図ったとされる男性は、法輪功の初歩的な動作である「結跏趺坐(両足を組んで座る、座禅)」や「結印(手のひらをたまご型に重ねて足の上に載せる)」が出来ていない。中国大使館(日本語)の同事件を伝えるページによると、自殺者は「法輪功の信仰心が深かった」という。仮にも、自殺する覚悟があるほど信仰深いならば、なぜ基本動作も出来ていないのだろうか。

4、法輪功修煉者は殺生をしない。これには自殺も含まれる。

米紙ワシントンポストの調査では、焼身自殺を図った者のうち、少なくとも2人は、法輪功を修煉したことがなかったことが明らかになった。 

米タイム誌は、この事件で中国当局は法輪功の弾圧を正当化にするための材料を手にしたと報じた。また米CNNは、事件が引き起こされた背景には、当時反対の多かった法輪功弾圧政策に対する世論を変えるための手段だとし、法輪功に対するネガティブキャンペーンは文化大革命や朝鮮戦争時に使われたものを彷彿とさせる、と伝えた。

国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」はこの事件について「記者が確認できる情報が少ない。報道するには難しい事件」「政府がでっち上げた可能性がある」などを指摘している。政治ジャーナリストのダニー・シェクター氏は、この事件は第三者機関の証拠が出されていない事件と述べている。



新唐人テレビ作成 映像検証ビデオ「False Fire(偽火)」英語版

なぜ中国共産党はこれほどまでに手の込んだ芝居を演出したのだろうか。法輪功は、1999年には評判が良く、広く知られており、国民1億人が修煉していた。同年に開始された法輪功に対する弾圧政策に、中国人の多くが疑問を呈していた。

そのため、中国共産党は「法輪功は正気を失わせる危険なものだ」というカルト的イメージを作り上げる必要があった。「焼身自殺」を捏造し、国営メディアに連日これを宣伝させることで、それまで法輪功を支援していた多くの中国人は、危険でさえあると信じるようになった。

法輪功学習者への迫害を伝える「明慧ネット」は次のように呼びかけている。「真善忍に基づいて道徳を向上させ、身体の素質を向上させることは、個人、家族、社会にとっても百利があって一害もない正しい道、善に向かう道」「ビデオ分析や報道から、中共の邪悪な本質に気づき、真実を正しく判断されることを切に望む」 

(文・佐渡 道世)